第42話 総司令
※アリエス視点
「あぁ、なんて素晴らしい光景でしょうか!」
私は、歓喜に包まれ、両手を広げる。
「支援部隊の皆さん、根こそぎ、物資、金貨、魔道具を、奪うのです。」
城壁の門、4つ全て占領してから3日。
出入り口を封鎖したため、現在、クレイモラン領に住む者たちは、建物の中で息を潜めている。
初日は、城門に人間が群がり、醜い争いをしながら城壁の外へ出ようとした。
「我らの王は、こうおっしゃいました。灰にしろと。それに応えない者は、私たちの中にはいません。」
技術部隊と工作部隊を連携させて、破壊工作を実施。効果はてきめん。城門に群がる人間を、文字通り灰にした。
「技術部隊が用意したアルコール。それを工作部隊がばら撒く。ばら撒くというより、放水ですね。そして、それに火をつけると、一瞬で燃え広がり焼け朽ちていく。そして、灰になります。とても、素晴らしいです。」
ナイン王から、直々に天才と評される、イレーナとサリー。よくこんな物を大量に用意出来ますね。頭の出来が違うのでしょう。
「アリエス総司令、こちらが支援部隊が押収した物のリストです。あと、各部隊の報告書です。」
シェリー。彼女も優秀です。情報処理がとてつもなく早い。獣人にしては、戦闘能力が低いが、ナイン王に才能を見出され、秘書まで登りつめた才女。
「シェリー、ありがとうございます。貴女、今、充実していますか?」
私の問いに、目を細め、口角が上がり、静かに笑う。
「ふふっ。愚問ですよ、アリエス総司令官。私は、我が主に拾って貰わなかったら、戦場で即死していたでしょう。ですが、あの眼に見出されました。自分でも気付いていなかった才能を見出され、引き上げられる。自分が成長し、皆の役に立っていると思うと幸せ。そして、それが怨敵を苦しめられる武器だとするならば、これに勝る喜びは、ひとつを除いてないでしょう。」
立派になりましたね、シェリー。とても誇らしい。
「そうですね。シェリーの武器は、私たちになくてはならないものです。その能力を十分に発揮する限り、私たちは、何度でも立ち上がれます。感謝します。シェリー。」
「こちらこそ、アリエス総司令官に感謝の念は絶えません。我が主の出現を信じて率いて下さらなかったら、何も始まっていなかったのです。」
「ふふっ。ありがとうございます。立ち止まらせて申し訳ありません。この報告書をしっかり読ませて頂きます。」
シェリーがまとめてくれた報告書に目をとおしていく。ふふっ、ふふふふふ。各部隊からの報告書は、どれも素晴らしい結果を出している。人を何人殺し、どのような殺し方をしたのか。何を奪って、何を捨てたのか。
「3日間で、おおよそ5万人が死亡ですか...上々ですね。ですが、これで5分の1とは...増えすぎですよ、人間。」
種族能力が1番低いのは人間。例外も存在しますが、エルフのような膨大な魔力持っているわけでもない。身体能力では、獣人には敵わない。優れているとしたら繁殖能力、知恵、知識ですね。
「ルイズが、敵の通信装置を破壊してくれたおかげで、他の街や国からの援軍は来ない。来たとしても、白騎士で対処すればいいです。それより先に、冒険者ギルドと商人ギルドを制圧ですね。」
どうやってギルドを制圧し、灰にするか思考を働かせようとした時、携帯に着信が入る。表示された名前を見て、直ぐに電話をとる。
『もしもーし、俺だよ。アリエスさん。そっちは順調かな?』
「ナイン様、お元気そうで、何よりです。こちらは、順調です。今は、冒険者、商人ギルドの対処を考えております。」
『...ごめん、冒険者ギルドと商人ギルド、さっき潰しちゃった。各ギルドに、素材やら金が沢山あるから回収して欲しい。出来そう?あっ、無理なら大丈夫!後でも構わないから!仕事増やしてごめん!』
「いえ...ふふっ。大丈夫ですよ。各ギルドには、技術部隊と工作部隊を向かわせます。」
いつも、私がやろうとしたこと、平然とやってしまう。どんな手段を使ったのか分からないが、短期間で、誰よりも優れた結果を出す。
『そっちも大変なのにありがとう!恩に着るよ。それと、そろそろ敵兵の暴動が起こると思う。キメラの投入の準備よろしく。それじゃあ、またね。』
最果ての地に住み着く、人間に作られた魔獣キメラ。エタンセルいる人数だけで街を滅ぼすことは、正直難しい。出来ないこともないですが...。
「エタンセルで捉えているキメラは、お腹が空いているでしょうし頃合いですかね。ギルドの置き土産を頂戴してから、投入いたしましょう。ふふっ。」
キメラは、ちゃんと回収して有効活用しますから、頑張ってくださいね。クレイモラン領の皆さま。
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