第43話 タイマンの仲裁
ギルドには、魔物の素材や金貨、情報が多くある。それだけではない。戦闘に長けた冒険者、商人ギルドの用心棒がいるのが定番だ。
「で?そのギルドを破壊して、ちょっと強そうな奴がいたから、勢いでつい、ぶっ殺してしまったと。」
「あぁ、力を抑えているとはいえ、私の剣を受け止めた人間がいたんだ。殺りごたえがあって、つい重りをひとつ外して殺ってしまった。あははははっ!」
反省することなく、笑って誤魔化すセレナ。
「はぁぁ。 まぁ、理性が残っているだけマシか...?セレナ、ここはもういいから、次の作戦の先陣をお願いしたいから休め。」
暴れ足りないのだろう。少し、暴走気味になっている。これは遊びではないんだが...。最近は、キメラの相手をせず、俺の護衛ばかりさせていたから、ストレスが溜まっていたのかもしれない。
「その作戦はいつからなんだー?」
「セレナ、もう少し緊張感をもて!」
そろそろキレる頃だと思ったよ。セレナの胸ぐらを掴み、頭突きを食らわすフレアさん。
ゴオォンッ!っと大きな音がした。おいおいおい、頭割れていないだろうな?
「ふふふふっ、やってくれる...フレアッ!久々に、本気で殺りあおう!」
「良いわよ?瀕死にしてやるわ!」
魔力を練った影響なのか、人間の俺でも可視化出来る魔力を身体から溢れ出している。
ギルドにある資源が塵になってしまう前に、なんとかしなければ。
「なになになにー?何やってるのー?王様に呼ばれて来てみれば、楽しそうなことしてるー!」
張り詰めた空気の中、それを打ち消すかのような呑気な声が響く。さすが、サリーちゃん。空気を読まないだけのことはある。ここは、それに便乗するしかない!
「サリーちゃん、お疲れ様。呼び出してごめんね。技術部隊にとって、お宝がたくさんあるから回収して欲しいんだけど、あの二人が暴れたら、全部消えちゃうんだよ。ヤバいだろ?」
俺の話しを聞いて、口を膨らませるサリーちゃん。
「えー、それは困るよ!冒険者ギルドと商人ギルドにある資源とか、キメラと同等の価値があるのに!本気で、やめてほしい。イレーナはどう思う?」
技術部隊の隊長イレーナさんが、いつの間にか、俺の後ろにおり、サリーちゃんに話しをふられる。
「迷惑...。あの2人は...王様の護衛から外すべき...」
「おっ?さすがイレーナ!署名して、クビにしちゃおー!」
イレーナさんとサリーちゃんの会話が聞こえたのか、溢れ出していた魔力が消え、肩を並べ、俺の方へ歩いてきた。
「あー、なんだ。あれだ。ごめんなさい。」
「すみませんでした...」
セレナとフレアさんは、俺と技術部隊の面々に頭を下げ、謝罪する。護衛から外れるのが、そんなに嫌なのか?っと、疑問に思ったが、余計な詮索はせず、2人を許す。
「イレーナさんとサリーちゃん、ありがとう。2人のケンカが収まったよ。」
俺は、親指を立ててGoodポーズをする。イレーナさんとサリーちゃんは、Goodポーズを返してからギルド資源の回収に向かった。
マジで、助かった。冒険者ギルド、商人ギルドには、どうしても欲しい物がある。それは...身分証を作成する魔道具。それがあれば、偽装し放題になるかもしれない。
「それじゃあ、セレナとフレアさんは、しっかり休んで明日に備えてね。2人が休んでいる間は、別の者に護衛を頼むから安心して。」
「分かった...もう寝る。」
「私も、頭冷やしてきます。」
エタンセルと一旦帰還する2人を見届けた俺は、影に向かって話しかける。
「ルイズさん、いる?」
「はい、ここに...」
「クレイモラン伯爵は、まだ生きていけるかな?」
「はい。先程確認致しました。」
「そう...。今日の夜、伯爵とご息女に挨拶しに行こうと思う。ルイズさん、引き続き、護衛をお願い。」
「了解しました...」
自分の影に話している俺は、傍から見れば、独り言を呟いている奴に見える。ルイズさんがいると思ったから、話しかけた。表の護衛は、セレナとフレアさん。裏の護衛は、ルイズさん。通信装置の破壊工作の任務達成してから、ずっと俺の影に潜み護衛していたのだ。
「ホープ伯爵、そして、クレア。会うのが楽しみだよ。くふふふふ...」
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