第9話 道中
行軍。軍とは言えないが、85人が一斉に最果ての地エタンセルを出るために歩き出す。
エタンセルと名付けたのは、我らではない。最果ての地でキメラを狩っている時、洞窟を見つけた。そして、その洞窟の中を進むと人が住んでいた形跡があったと報告を受けた。
「まさか、昔、最果ての地に小さいが国があったなんて、見た時は驚いたな。」
「ねー!この地に国があったなんてー、凄いよねー!どんな国なのか随分調べたけど、キメラ生み出して自滅したのが笑えるねー!」
「こら、キィ。ナイン様に馴れ馴れしいわよ。」
ノーラさんがミィちゃんに注意しているが、俺は気にしていない。それよりも、普段通り接してくれると嬉しいんだけど……。
「えー?ナイン様に、いつも通りに接していいと言われたもん!」
「そ、そうだけど。本当にいいのかしら……。どうしても、私は神聖視してしまうから難しいのよ。」
「ノーラ姉は、不器用だなぁ。あははははっ!」
「ミィも、ナイン様のこと神様って言っていたでしょ?」
「それは、それ。これは、これ。あははははっ。」
ノーラさんとミィちゃんの話しを聞いていると、少しおかしい内容があったが気にしない。これも何度も注意したけど治らないから諦めた。
「古代文明…未知がいっぱい...。とても楽しかった…。」
たどたどしく話すのは、白猫耳のイレーナさん。この世でも珍しいアルビノ。全てが白い。とても内向的だけど、人一倍勉強熱心である。魔道具の解明は、イレーナさんのおかげ。
「イレーナさんは、まだエタンセルに居たかった?」
挙動不審になるイレーナさん。俺から話すといつもこうなる。少しショックではあるけど、人それぞれだから仕方ない。
「い、いえ......。あ、あ、あの、私も復讐、楽しみ…です。そのためにいっぱい、勉強して研究...した。サリーと一緒に…いっぱい魔道具を…作った……です。」
「もー、イレーナったら、褒めないでよー!サリーにかかれば魔道具なんてちょちょいのちょいだよ!武具も武器をちょちょいのちょいちょいだよー!」
凄く元気いっぱい、ちっこい熊族の獣人のサリーちゃん。お調子者ものだけど腕は確か。熊族にしては、しっぽが丸いくらいでほとんど人間と変わらない姿。
イレーナさんとサリーちゃんの2人は、生活基盤を大幅に改善させた。これからも皆を支えてくれる頼もしい存在である。
「キメラやよく分からない魔物のおかげで素材は腐るほどあるけど、街に着いたら売るの?」
「サリーは、売るつもりなんてないよー!サリーたちの素材は、サリーたちのもの。絶対売らないよ!サリーたちから奪うだけのクズ共には絶対に...。」
「あはは、そうだね。これからは俺たちが奪う側になるからね。因果は巡るってやつだね。楽しみ、楽しみ。」
もう、何も失わないせないし、奪わせない。
愚問だったな。今度は、俺たちが奪う側だ。
斥候が戻ってきて報告を受ける。この先に村があるそうだ。彼女たちが立ち寄ろうとした時、悪意をもって追い出した村との事。最果ての地に近い村であり、食糧を求めていたのに身体を差し出さないければ渡さない。その位しか価値がないと。
なんて残酷なヤツらだろうか。身体を許すわけにはいかないとアリエスさんが断ったらしいけど...。
「どうなさいますか、ナイン様?」
「アリエスさん...、君たちはどうしたいんだ?」
口角を上げ、目尻を下げニタッて笑うアリエスさん。
「殺りましょう。徹底的に...、そして何人か逃がして恐怖を積ませて絶望の染めましょう。くふふふふっ。」
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