第8話 プロローグ


 宣言した復讐を目的とした生活をするのであれば、生ぬるいことは言ってられない。


 「弱者のふりをする強者であるべきだと、私は考えている。油断を誘い、勘違いを起こさせる。今の立場を最大限に利用しよう。ここは最果ての地と君たちは呼んでいるが、とても良い所だ。力を蓄えるのにもってこいだね。」


 「そうですね...少しずつ、前に進むためにもここにいる魔物を経験値にして強くならなくては。」


 俺の言葉に返事を返してくれたエマさん。その隣にいるミィちゃんたちも目に宿す黒い感情を見て、俺は嬉しく思う。最低な男。でも、これでいい。もう戻れない...



 それから、あの宣言から5年後...



 1人として死なず、全員が吠え、宣言した場所に集まり俺たちの復讐の物語が始まる。長いプロローグは終わり、目に力が宿り自信に満ちている。


 「あはははっ。ようやくこの時が来たわ!やっと、殺せる。」


 まさか、あのミィちゃんが、こんな言葉を発するなんて思っていなかった。

 5年、長いようで短いような時間を過ごした。何度も死にかけた。何度も逃げた。何度も挑んだ。最果ての地という魔境。


 「金を見つけて、それを換金して、ナイン様が揃えてくれた武器がこんなにも強力だから...死ね。」


 ミィちゃんと同じく、5年前はまだ幼かったハーフエルフのステラちゃんが俺たちの近くに寄ってきた魔物を撃ち殺す。


 「この魔物キメラを殺すにも、はじめの頃は必死だったわね...。ふふっ。早くアイツらも解体したい...。」


 魔物の死体を解体し、肉だけを取り除くノーラさん。

 鹿のような角にガタイのいい馬の胴体、顔がラクダの魔物。一括してキメラと俺たちは呼んでいる。理由は、一々、名前を付けるのが面倒だったから。


 「こっわぁーい、ノーラ姉さん。相変わらず凶暴だねぇー。そういえば、アリエスさんとエマ姉は?」


 ミィちゃんに問われ、俺は、辺りを見渡しながら答える。


 「小屋だよ。俺たちが初めて会った場所に、墓立てろ?お参りじゃないかな。」


 「えー、それなら私たちも誘ってくれれば良いのに!」


 口を膨らませて、プンプン怒るミィちゃん。こういう所は昔と変わらないな...。

 ミィちゃんたちと話していると、アリエスさんとエマさんがやってくる。


 「お待たせ致しました。ナイン様。」


 「2人とも、お参りは済んだ?」


 「はい。時間を作って下さりありがとうございます。」


 「感謝致します。ナイン様。」


 アリエスさんとエマさんからのお礼。何万回聞いたのだろうか...。


 「気にしなくていいよ。あと、仰々しい挨拶とポーズはやめてくれ。」


 胸に手を当て片膝をつけ頭を下げる2人に、何度目か分からない注意をする。


 「いえ、我らが王でありますから。これは普通のでございます。ナイン様こそ、早く慣れて下さい。お願いします。」


 相変わらず、押しが強いアリエスさん。昔から変わらない。


 「そうですね。ふふっ。慣れないとダメですね。」


 笑顔でダメ出しをするエマさん。みんなに慕われるお姉さんだ。怒らせるとヤバい。


 「わ、分かった。慣れるよう努力するから立って、ほら!もうみんな集まっているんだから。」


 渋々承諾したような感じで立ち上がり、剣を鞘から抜き頭上に掲げるアリエスさん。


 「皆、ようやくだ!ようやく、私たちの、私たちの憎悪、執念を晴らす時が来た!私たちには、王がいる。王が進む道に、私たちの敵がいる!必ず、残酷に苛烈に殺していきましょう!」


 各々が武器を掲げ、雄叫び上げる。


 「さぁ、いきましょう!私たちの世界には要らないゴミ掃除をしに!」


 エマさんが声を上げると、みな、足を地面に何度も踏みつけ音を鳴らす。

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