第21話 食屍鬼
「ガッ、ゥアルルウアァァアッ!!」
元人間だった、グールが村の中で暴れまわっている。俺は、その事を別の場所で働いていた奴隷たちに寝床の家に戻るよう指示を出す。
奴隷を管理していた人間には、グールがいる現場に連れていく。グールの餌食になってもらうため、無理やり殴ってでも連れ出す。
奴隷を寝床の家に全て戻し終えるころには、全ての現場作業の人間はグールになっており、村人に襲いかかっていく。
悲鳴があがり、血が舞っていく。
キメラ作りの副産物。この薬は、遅効性で水に溶かして服用させると更に効果が現れるまで時間がかかる。この1週間、ずっと水汲みの仕事を与えられ、注ぐよう命令されていた。
「一般人は、6日間。身体を鍛えている冒険者の方は、どうかな?ルイズさんたちが影から薬を混入させているはずだけど。研究には、犠牲が必要となる。アデス村の村人たちよ...我らのために魔物になってくれ。ふふっ。」
村長は、グール討伐に兵を出すはず。もしくは冒険者たちを頼るのか。どちらでもいいけど、早くしないと、グールに噛まれた人間がグールになっちゃうぞ?あはっ。
「ナイン様。ここは危険です、御身はお下がりください。」
アリエスさんの部隊、通称、白騎士の1人が村人に変装して報告があるということで、グールの現場から少し離れる。
「シーラさん。お久しぶり。どうした?作戦が始まった?」
「はい。作戦が始動しました。今、ミィたちの部隊が武器を屋に強襲し、奪取しております。宜しいので?その武器を奴隷たちにお渡ししても。」
「あぁ、構わない。武器屋にある物なんて、所詮鉄の塊。大した武器なんてないさ。それより、村長宅にある宝剣が欲しいな。情報では、村長の家に飾っているとか。」
「ふふっ。ナイン様は、そういう宝物に目がないですよね。現在、隠密部隊のソフィアとジェシカが村長宅に侵入しております。吉報をお待ちしましょう。さぁ、ゲートの方へ向かいますよ。」
宝物に目がないの確かだけど、俺が使うわけではない。宝剣という名前からして、剣だろう。自分では扱えない。それでも、戦力の強化になるのであれば、是が非でも欲しい。
ゲートを設置したボロ家に行くと、エリさんとカーラちゃんが出迎えてくれた。
アデス村に因縁をもつ2人。今回の作戦のメンバーから外し、別行動の許可を与えている。
「エリさん、カーラちゃん。出迎えありがとう。頭をあげて、楽にしていいよ。」
跪く彼女たちが、立ち上がり、目をギラつくせ、俺の指示を待っている。
「それでは、エリ、カーラの両名に告げる。アデス村の殲滅を命じる。思う存分楽しんでおいで。」
「了解っス!ありがとうございます、王様!」
「はい、であります!」
この村の奴隷に詳しかったカーラちゃん。村の名前を知らなかったのは、劣悪な環境下にいたこと、労働時間が長く、睡眠時間が少なかったため、心が摩耗し、それどころではなかったからである。ブラック企業に勤めると、物忘れが多くなる。俺もそうだった。
俺は、彼女たちを笑顔で送り出しから、ゲートを潜り、エタンセルに戻る。1週間ぶりの帰国である。我が家に帰ってきたという、安心感に包まれる。
「おかえりなさいませ、ナイン様。」
「アリエスさん。ただいま。急な仕事を押し付けてしまって申し訳ない。ゴミ処理は、出来た?」
ゲートの近くで待機していたアリエスさん。アリエスさんには、数日間、休暇を与えていたため、アデス村に来ることは無かった。
「はい、滞りなく処理致しました。魔法の的としては、最高の素材でした。ふふっ。時間通り、こちらにお戻りになったということは、作戦が開始されたのですね。」
「そうだね。今頃、アデス村は、パニック状態だろう。くふふふふふふ。笑いが止まらないね。あの村の殲滅が終わったら、この作戦に参加している者たちに休暇を与えて。常に万全の状態にいてもらいたい。」
アリエスさんにも笑がこぼれ、嬉しそうに頷く。
「ナイン様も、殴られた箇所の治療を受けてから休んで下さい。くれぐれも勝手な行動をなさらないよう大人しくしていて下さいね?もし、何かしたら、ナイン様をベッドに貼り付けて毎日、奉仕を受けて貰います。」
ブルりと身体が震える。なんという拷問を考えつくのか。そんなことしたら、身体が壊れちまう。
「分かった。しっかり休ませてもらうよ。って、なんで残念そうなんだよ?」
明らかに残念がっているアリエスさん。肩を落とし、ため息までついている。
「いえ、全く残念に、思っておりません。ただ、そろそろ肌を重ねないと暴走してまいそうで...」
「あー、うん。考えとくよ...」
「是非、検討してください!」
はぁぁ。人間もハーフエルフも獣人も性欲はある。この国には、俺しか男がいないため、必然的にそうなる。必要な事だと思って割り切るしかないな、これ。
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