第56話 オーク討伐


 「冒険者がオークと戦っているね。」


 依頼書に記載されていた特徴と一致する魔物ことオークと戦闘をしている冒険者パーティ。


 「どうする?どっちも殺っていい?」


 俺の方に顔を向け、確認するセイラさん。


 「いや...ここは、冒険者のルールに則って傍観しよう。横取りは、推奨されていなかったし。」


 こくこくと頷いて、了承してくれたセイラさんは、周囲に他の魔物や人間がいないか確認後、足音をなるべく立てずに戦闘が行われている場所に、俺を案内する。もちろん、オークと冒険者パーティに気づかれない距離を見極めている。


 「あっ、人間が一人死んだ...」


 「マジ?えっと...うわっ。本当だ...」


 裸眼では確認出来ない俺は、スコープ越しで確認する。オークの棍棒に血が付着しているのが見え、死んだ冒険者を確認すると、頭を潰されたらしい。戦況は、冒険者パーティが、死んだ冒険者を合わせて五人組。それに対して、オークは三体。


 オークの一体が、棍棒を横に振り回し、冒険者の剣を弾き飛ばす。そして、大きく振りかぶるオーク。そのオークの隙を突いて、盾持ちの冒険者がシールドアタックをし、剣を弾き飛ばされた冒険者を助ける。


 「激しい攻防をしているように見えるけど、動き遅くね?オークもそうだけど、冒険者の動きが遅すぎる気が...あっ、魔法だ。よっわ...」


 俺の口から、素直な感想が漏れる。この世界に来てからずっと、キメラと戦闘してきた。クレイモラン領で、立ち向かってくる人間と少し剣を交えた程度しかないため、俺は、自分の戦闘能力を正しく認識していなかった。


 「えっ、ちょっ。よわっ。なにこれ?冒険者って、あんなに弱いの?」


 「ふふん!アタシたちが強くなった。ただそれだけ...」


 フードを取り、ドヤ顔で俺に向かって言うセイラさん。可愛いから、頭を撫でる。


 「くふふふっ。ナインさんのなでなで好き。」


 「そう?それは良かったよ。戦況を見る限り、冒険者パーティは全滅するだろうね。」


 頭を撫でられながら頷くセイラさんに、指示を出す。


 「オークの一体は、俺が戦うから、残りの二体狩ってくれる?」


 「もちろん。ナインさんの邪魔にならないよう瞬殺する...ナインさんの戦う雄姿をみたい…」


 俺の戦うところを見たって、なんの役にも立たないと思うのだが...。まぁ、いいや。いざヤバかったら、魔銃を使えばいいし、何とかなるはず。


 「もうそろそろ、距離を詰めといた方がいい。」


 「了解。戦闘開始の合図は、セイラさんにお願いするよ。」


 「うん。任せて...」


 俺たちは、なるべく悟られないようオークの背後に近づく。わざわざ、正面から挑む必要はない。確実に仕留めてやる。

 最後の冒険者が殺し、雄叫びを上げるオーク。棍棒を手から離し瞬間、セイラさんが茂みから出てすぐにオークの背後を取り、首をはねる。


 「今!」


 セイラさんが声を上げて、残り二体のオークの注意を引く。オークの意識がセイラさんに向きかける前に、俺は、オークの背後に移動し、その勢いのまま刀を抜刀。居合切りのようになってしまったが、オーク一体の首をはねることに成功する。それと同時に、残り一体をセイラさんが首をはねる。


 「ふぅぅ。堪んないね、この緊張感。あと、一撃で倒せたのが嬉しい!」


 「さすが、ナインさん!見事な一振りだった。」


 有言実行のセイラさんに褒められると、また喜びがこみあがってくる。ただ、ここに長居は出来ない。オークの血に、人間の血が、地面に飛び散っている。血の匂いに敏感な魔物は、すぐにここへ来るだろう。


 「余韻に浸るのはここまで。さっさと魔石と討伐証明の部位を切り取って、冒険者ギルドに帰ろ?」


 「うん。魔石は、アタシが抜き取る。」


 手際よく魔石を抜き取っていくセイラさんの邪魔にならないよう、血抜きを済ませ、首をずた袋に放り込む。最後に、死んでいる冒険者の装備やアイテムを頂戴して、その場から離れる。


 「さっきの冒険者パーティは、Cランクが一人、Dランクが四人かー。俺が普通なのか?」


 冒険者ギルドに戻る道中、死んだ冒険者のギルドカードを見てランクがそれなりにあることに驚きつつ、考察する。

 俺の実力は、Cランク以上であること。セイラさんは、比較対象がないため、暫定Sランクとする。


 「こうなってくると、S級冒険者パーティの面々がどれだけ強のか知りたくなってくるな。俺でも対応出来るなら、確実に、エタンセルの全員より弱いっということになる。」


 「それって...大丈夫?逆にアタシたち目立たない?」


 セイラさんの懸念は、その通りだ。強すぎるとかえって目立つ可能性がある。


 「断定は出来ない。S級冒険者パーティの実力を把握してから、今後の能力のセーブについて考えよう。」


 冒険者ギルドまであと少しのところで、スボンのポケットにしまっていた携帯が震える。

 周囲の人間たちにバレない物陰に隠れて、携帯を見ると同時に爆発音がした。


 『闇ギルドが、ナイン様を売る計画をしていたから潰すことにしたわ。もちろん情報と金品などは押収済みよ。』


 『アルマ大勝利\(°∀° )/!!!』


 「闇ギルドに、俺が行く前に破滅するとか...姿をしっかり隠していればいいんだけど。」


 携帯をポケットにしまい、セイラさんと一緒に冒険者ギルドの中に入る。オークを換金してから、少し時間空くから、ミィちゃんの怨敵情報を探るかな...

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