第57話 ランクアップ?
俺とセイラさんは、相変わらず誰もいない暇そうにしている受付の男に声をかける。
「グレイさん、クエストのオークを討伐してきました。確認してください。」
ずた袋から、オークの首をカウンターに置き、セイラさんは魔石を提出する。
まさか、オークの首が三つ、カウンターに並ぶと思っていなかったのか、目を見開いて驚くグレイさん。
「おうおう、こりゃあ、中々じゃねぇーか。綺麗に首をはねたなっ!それに、欠損なしの魔石...うむ、合格だ。報酬は、一体につき銀貨50枚、計150枚だ。」
「どうもです。このギルドには、訓練所があるんですよね?S級冒険者も使われるのですか?」
顔を横に振り、否定するグレイさん。
「アイツらはそんな事しねぇ。あ...二人、たまにいるな。」
「そうですか...S級冒険者には、中々会えないから、一度拝見してして見たかったですが、残念です。」
たまに訓練所にいるなら、いずれ会える。その時を楽しみにしておこう。
用事が済み、俺とセイラさんが、受付から離れようとした時、グレイさんから呼び止められる。
「待て。おメェらに話しがある。少し時間をくれ。」
俺たちに、話し?なんかしたか?闇ギルド壊滅の情報は、まだ出回っていないはずだし...王立高等学園の依頼について?嫌な予感しかしないから、無視してもいいんだけど。
「ちっ...早く。」
「話しとは、何ですか?」
面倒くさそうな態度で、俺は、グレイの話しに対応する。セイラさんが、明らかに不機嫌になっているから早く済ませて欲しい。
「話しは、二つあるんだが...もう少し年長者を敬う気持ちは、ねぇのか?おメェらは。まったく、これだから若いもんは...」
俺たちの態度が気に入らなかったんだろうか、ぐちぐち説教をかまそうとするグレイさん。とてつもなく面倒くさい。年上だから敬うとか、いつの時代だよ。こちとら、天下のゆとり世代だぞ?そんな常識ねぇーよ。(ゆとり世代の皆さん、ごめんなさい。)
「はいはい、分かった分かった。話しは、年上として敬う気持ちや態度を心がけることですね。分かりました。それでは失礼します。」
「ちげぇよ。全然、敬ってねぇだろおメェら。はぁぁ。もういい。一つ目の話しは、Cランクへの昇進をするかどうかだ。俺に対する態度が気に食わねぇが、実力は本物なのは分かる。オークの首を一振りで仕留めたみてぇだしな。俺の推薦でランクを上げることができるがどうする?」
グレイ・アックスの推薦があれば、ランクが上がる?クレイモラン領にあった冒険者ギルドのマニュアルには、そんなこと書いていなかったと思う。
「グレイさん。Cランクに昇進するには、複数の依頼をこなし、ランクが上の者、もしくは試験官との模擬戦の結果次第と聞いていたんですが...」
口角を上げ、獰猛な笑みをするグレイさん。傍から見れば、裏稼業に勤しんでいる男にしか見えない。
「あぁ、確かに、おメェの言う通りだ。だが、Dランクの奴がオークの首を一振りで始末出来ねぇ。どう考えても、実力はDランク以上。試験官による模擬戦をしてもいいんだが、おメェらの実力が分からない以上、下手に試験をさせられない。っと言うことは、俺の目で判断して推薦するかねぇんだ。クソガキ、分かったか?」
「ちっ...こいつ嫌い。」
セイラさんの機嫌がますます悪くなっている。一旦、俺はセイラさんを落ち着かせてから、グレイさんに返答をする。
「グレイさん、煽るのやめてもらえますか?」
「はんっ。よく言うぜ、俺の殺気を飄々と受け流しやがって。まぁ、いい。ランクアップとは別件で確認したいことがある。おメェら、オーク討伐する際、他の冒険者パーティに会わなかったか?」
グレイさんが知りたいのは、きっと、オークに殺された冒険者のことだろう。なんと答えたらいいのやら。
「死んでいた冒険者なら知ってますよ?オークに殺されたんじゃないですか?」
「ほぅ。そりゃ、本当の話か?」
「えぇ。それがどうしたんですか?」
顎を手でさすっているグレイさん。俺たちに言うか迷っているようで、チラチラと俺と目が合う。
「うーん...なんでもねぇ。おメェらには関係ねぇ話しだからな。」
気にはなるが、面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。グレイさんは、もう俺たちに用がないようで、受付カウンターから離れる。まだ、ランクアップの件について返事してないんだけど...
「セイラさん、一度宿に戻ろ?また今日の夜、冒険者ギルドに寄るから、ご飯食べて休もう。」
不機嫌なセイラさんの手を掴み、冒険者ギルドから出る。
女性の機嫌を治すのが一番めんどくさ...大変だと言うのに、グレイさんめ。セイラさんを怒らせてなんの意味があるんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます