第23話 久びさの帰還
「はぁー。生き返るぅー。久びさのお風呂たまんねぇなー。」
俺は、旅の疲れを癒すため、現在入浴中。村に着いても、濡れた布で身体を拭くことしか出来なかったからな。ほぼ、日本と同じように作っている浴室。
「いつになったら、浴室に壁が出来るんだよぉー。」
湯気でメガネが曇っているシェリーさんに文句を言う。
「そ、それは、我が主の身を守るためです。決して、我が主の身体を舐め回すためではありません、はい。」
嘘だ。嘘をついている。超ガン見しているじゃん。
女風呂も壁がなく、丸見え。シェリーさん曰く、気にしないそうだ。よく分からん。
「ねぇー、シェリーさん。そこでカメラを回している変態たちをどうにかしてくれよー。」
ぐへへっ。じゅるり。はぁ、はぁ。
目が血走っている、サリーちゃんとその仲間たち。イレーナさんなんて、服を脱いで自慰行為をしている。
全く何しているんだか。まったり湯に浸かれないじゃんかよ。
「それは...難しいです。申し訳ありません、我が主。」
メガネの曇りを拭き取り、チラチラ俺を見るシェリーさん。俺の裸見て興奮するとか、頭おかしいだろ。
「なんか、取り引きでもしたのかなー?」
「さすが、我が主。おっしゃる通りです。ふふっ。」
「はぁぁ。普通逆だと思うんだけどなぁ。」
気にしたら負け。本当は負けたくないが面倒なので、負ける。
風呂から上がり、軽く食事を済ませてから執務室の椅子に座る。シェリーさんが作成した資料に目を通す。
魔物の出現、生態系の変化、作物の状況に状態、今回の旅での出費、アデス村での物資の支出など、報告書は多岐に渡る。
「魔物の出現による生態系の変化。これは要観察。もしくは排除。いや、魔物が来てくれた方が人間共を立ち寄らせないように出来るのか?うーん...」
報告書に俺の意見や感想を記す。こういう仕事も大事なこと。知ることをやめてしまったら、どこかでしっぺ返しを食らう。見落としがないか、隅々まで読み解き、考える。
コンコン。
「どうぞー。」
執務室に入ってきたのは、アリエスさんとエマさん。
アリエスさんは、追加の書類を持ち込み、エマさんは、コーヒーの用意をしに来てくれた。
「ナイン様が不在の間、私たちが潰した開拓村に立ち寄る人間がおりました。詳細はこちらの書類に記載しております。」
「変化?」
俺は、エマさんが用意してくれたコーヒーを飲みながら書類を確認する。
どうやら、開拓村に立ち寄った人間がいたそうだ。監視任務についていた、エマさんの部隊が発見し尾行しているとの事。俺たちが向かったアデス村ではなく、別の村、スヴェン村の者らしい。
「スヴェン村ねぇ...最果ての地エタンセルを知られるわけにはいかない。早めに手を打つとするか。」
「それでは、こちらの魔道具の設置の許可をお願いします。」
アリエスさんから渡された申請書類。幻惑の霧を発生させる魔道具の設置。元々エタンセルを覆い隠すために設置してあったが、キメラによって破壊されていたと思われ、その魔道具を回収し、復元した。
「魔石にも限りはあるが、ここで渋って被害が出るのは愚策。分かった、承認しよう。」
申請書類に判を押し、アリエスさんに書類を渡す。
「エマさん、魔物の警戒をしていた人員を全員エタンセルに戻してくれる?」
「魔物を放置するのは愚策では?」
「うん。そうかもしれない。だけど、人間がこの地に入ってくることは避けたい。魔物には、我々の隠れ蓑になってもらう。それに、魔物が強くなってくれたら、良質の魔石が取れるからね。メリットのほうが多いよ。」
「分かりました。警戒に当たらせている者たちへ、声をかけてきます。それ以外の指示はないですか?」
「そうだな...次の村までの旅の同行者の選別をお願い。やり方は任せる。」
「ふふっ。分かりました。みんな張り切って喧嘩にならないといいのだけど。楽しみ。」
笑いながら執務室をあとにしたエマさん。どんな選別をするのやら。
アリエスさんも申請書類をもって執務室を退出する。
「動き出したばかりだし、問題が山積みだ。そろそろ日本に戻って物資の調達をしないといけないし...」
今日は、書類を整理するだけで一日が終わりそうだ。
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