第17話 旅の食事事情


 「ふぁー。馬車って、揺れが酷いけど、慣れると楽だね。馬の世話が手間だけど、奪って良かったよ。」


 「ふふっ、そうね。あの村に向かっていた商隊があって良かったわ。スヴェン村から来たと言っていたけど、立ち寄るのかしら?」


 馬車に積まれていた売り物を手に取って確認しながら、フレアさんと会話する。


 「うーん...、スヴェン村には寄りたくないかな。この馬車を特定されると面倒だからね。それに、裕福な村とは言えなさそうだしね。」


 首を傾げるフレアさん。


 「どうして、そう思うの?」


 「金品と粗悪品の服だけしか積まれていない。スヴェン村代表しての商隊にしては、貧相すぎる。あと、この妙な粉。十中八九、危ない薬だろう。」


 「商人で確かめようとしたら、震えていたものね。毒物なのは確実ね。」


 なぜ毒を?

 ただ、これだけは言える。

 毒を取引きに使うスヴェン村は、ロクな村ではないだろう。


 「このまま進むとスヴェン村。フレアさんたちは、スヴェン村を経由していないんだよね?」


 「そうね。スヴェン村は通っていないはずよ。新しく出来た村なのか分からないけど、初めて聞いたわ。」


 全ての村を潰していたら、時間がかかりすぎる。ひとまずは、アリエスさんが選んで進んだ道を辿っていく。彼女たちを虐げ、無視した村や町、そして国を潰していく予定。


 「次の村は、比較的大きいんだっけ?」


 「私は、あまり覚えていないのよ。記憶があやふやで...。ごめんなさい。」


 「いいよ、気にしないで。見れば済む話だし。」


 フレアさんもまた、酷い過去がある。辛い記憶に蓋をしているため、あやふやになるのは仕方ない。

 ただ、その記憶の蓋を外すと、猛烈な怒りが溢れ、それを力にする。普通は、辛い過去に対して怯えるものなのだが...。


 「そろそろ、休憩しようか。」


 技術部隊の制服であるデニムのオーバーオールを着用している赤猫の獣人カーラちゃんに声をかけ、馬車をとめてもらう。

 ちなみにカーラちゃんは、ノーラさんの部隊所属のエリさんの妹だ。


 「王さまー、ここで休憩でありますかー?」


 「そうだよ。馬の世話は俺がするから、テントの設営お願いするね。」


 「はいであります!」


 姉にそっくりの見た目で語尾が特徴的。ハツラツとした性格で話していて、とても楽しい。

 馬に水とエサを与えた後、設営されたテントの中に入る。すぐに片付けられるよう、簡易テントである。


 「そこそこ進んだと思うけど、まだ次の村が見えない...。ここまでの道のり、危険なく進めたのが収穫かな。見張りは、交代で夜を過ごそう。もちろん俺もするからね。」


 「危険を感じたら、大声で私たちを呼んで。ナイン様に何かあったら、私死ぬから。」


 どういう意味の死ぬ、なのか分からないけど、真剣な目を見て、俺は渋々頷く。最果ての地までは、苦しい旅をしていたと思うから、これからの旅は、楽しいと思って欲しい。


 「フレアさん、分かったから。ちゃんと呼ぶ!助けを呼ぶから離れて。」


 キスする5秒前くらい顔を近づけるフレアさんを引き剥がし、ご飯の支度をする。旅のご飯は、湯煎で出来上がるカレーなど。飽きないよう、様々な食事を用意してある。


 「やっぱりカレーは至高であります!うまうまですっ!」


 カレーを口にほうばるカーラちゃん。美味しそうに食べてくれると、食卓に笑顔が増える。


 「私は、ハンバーグかしら。とっても美味しいわ。」


 黙々と食べるフレアさん。カレーに対抗して、好物のハンバーグを推す。他の技術部隊の子らも、各々、好きな物を皿に乗せ食べている。中には、味噌漬けの魚を食べている子もいる。

日本の食文化に大変感謝だな。

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