第50話 背中の刺青
小休憩も終わり、格ゲーの話しからメインテーマである復讐相手の情報に話しが移る。
「えー、それでは、ミィちゃん耳を面白おかしくちぎった人間の情報を話すよ。ペトラさんは、引き続き議事録の作成をお願い。」
握りこぶしを作り、ふんすっと鼻を鳴らすペトラさん。可愛い。
「まず、ミィちゃんを奴隷として購入したのは、エアリーズ公爵。先の話しに出ていたクレイモラン領に調査をしに行く公爵家とは別だ。アルディア王国で、公爵の地位についているのは、2つの家しかない。」
「おぉ、たった一日で復讐相手の家を突き止めるとは...さすがナインさん。」
褒めてくれるセイラさんに対して、俺は顔を横に振って否定する。
「この情報は、ミィちゃんが奴隷時代に着ていた服のおかげで特定することが出来たんだ。そうだよね、ルナさん。」
「ええ。ミィ、いいかしら?」
ルナさんがミィちゃんに許可を求める。過去に触れる話しだ。本人の同意なしでは話してはいけない。エタンセルで決めたルールのひとつ。
ミィちゃんは、ルナさんの問いかけに応対する。
「もちろんだよ。そのために、ナインさんに忌々しい服を預けたんだから…」
「ミィは、スゴいね。ボクなら、過去の服とか捨てちゃうよ。」
俺もアルマさんに同意見だ。でも、それをしなかったミィちゃんには、並々ならぬ想いがあったんだ。
「アルマの言っていることは、アタシも同意する。しかし...手がかりになる物なら処分しない。」
「確かに...ボク、軽率な発言しちゃった。ごめんなさい。」
頭を下げて、ミィちゃんに謝るアルマさん。それを笑顔で許すミィちゃん。心が広い…
「にゃははははっ。気にしない、気にしない。服については、私に気を使って、ナインさんが保管してくれてたんだー。優しいよね、ナインさんは。」
「ミィの許可を得たので、話しを戻すわね。この服は、ミィの奴隷時代に来ていた服。ここに、刺繍がされているのが分かるかしら。」
服の袖に刺繍がされているのを、ルナさんが皆んなに見せる。
「この刺繍は、エアリーズ公爵家の所有物であると証明するためらしいわ。ミィの背中に入っている刺青と同じよ。最低よね、人間は。」
ミィちゃんのことも所有物だということを証明するために刺青を入れるエアリーズ公爵は、クズ、外道だ。
「奴隷商人に確認したから間違いない。少しムカついたから、情報を聞き出したあと、毒殺したけどね。」
「笑いながら話す奴隷商人には、確かにムカついたわ。あと、公爵家の人間は、サドスティックで有名らしわよ?」
ルナさんは、同じサドスティックのアルマを見る。
「ボク?加虐的な性格なのは、自負しているけど、性的興奮はしないよ。ルナ、同列で見ないでよね。」
「にゃははは。アルマは、ギャップがあるから思われるんだよー。」
ミィちゃんの指摘に、アルマさんは、思い当たる節があるのか、うぬぬぬっと言って押し黙る。
「皆んなには、見てほしいな...私の背中。そして目に焼き付けて欲しい。」
そう、俺たちに言ってから、上着を脱ぎだすミィちゃん。慌てて俺は、顔を伏せる。
「あー、これは...」
絶句するクレアさん。ミィちゃんに言われた通り、目に焼き付けるペトラさん、セイラさん、ルナさん。きっと、初めて見たんだろう。ミィちゃんは、基本、一人でお風呂に入る。
「これを知っているのは、今までアリエスとナインさんだけ。公爵家の所有物として、紋章が刻まれているんだー。もう、ナインさんの女だからいいんだけど、この刺青は、一生消えないんだよね...そして、私の耳を引きちぎったのは、公爵家の次男のマイク・フォン・エアリーズ。」
一つ間を置き、ミィちゃんが声を低くして言う。
「私が、この手で一番殺したい人間です。」
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