第35話 旅の再開
クレイモラン伯爵領への進行が、技術部隊の大発明で一時中断となっていたが、2週間ぶりに再開した。
「ポータブルゲートのおかげで、一瞬かつ安全にこの森に戻ってこれた。利便性も高いし、最高だね。」
俺の様子を見ていたエマさんが、奥ゆかしく笑う。
「ふふっ、あの時のナインくん、すごい嬉しそうだったもんね。それに毎晩のどんちゃん騒ぎに、夜の営み。技術部隊には悪いけど、おこぼれもらえて私も最高だったわ...ふふっ。」
おこぼれの話しはしたくない。そのせいでクレイモラン伯爵領への進行が遅れたのだ。
「せやなー。毎晩、毎晩、潰れるほど飲んでお祭り騒ぎやったし。めっちゃ楽しかったわー。クレイモラン伯爵領で大量の金貨を徴収せな、あかんくなったけど。」
そう、金、金を使い捨て、金策をしないとまずい。非常にまずい。この街から根こそぎ、金貨を徴収しないといけなくなった。
「金については、どうにかするとして、クレア・フォン・クレイモランの処遇について検討しなくてはな。2週間も猶予を与えたのだし、殺されていなければ、良い話し合いが出来るはず。」
どんちゃん騒ぎで、すっかり忘れていた盗品。そして、子爵家の対応。
「私の予想は、イリアという小娘は死んでるとおもうなー。だってー、あの娘のせいで、交渉が決裂したと思われてる可能性が高いしー。全て、誤解で勘違いなのだけれども。ふふっ。」
黒い笑みを浮かべるニコルさん。ニコルさんの言う通り、誤解を招き、勘違いさせているところはある。
「スコープで確認いたしました。城壁での検問はに長蛇の列が出来ており、門兵も多数配置されております。」
魔銃に取り付けているスコープ越しで偵察していたステラちゃんから報告を受ける。
「少し厳重になったのかな?まぁ、俺たちの目的は変わらない。やること殺って、前に進むだけだ。」
「あぁ、ナインさん。かっこいい...」
早速、ガラケーを使いこなしているロジェさん。カメラで写真を撮ることにハマっている。一眼レフカメラを持っているが、邪魔になるためガラケーで俺の写真撮っている。
「さぁ、行こうか。メロス、頼んだよ?」
「シュルルルルルゥ!」
メロスが引く馬車に乗って、森から出て、真っ直ぐクレイモラン伯爵領の城壁の門に向かって走りだす。
道中、ステラちゃんから、アマンダさんとロジェさんと一緒にお風呂に入った時のことを聞いて、笑った。アリエスさんの雷、物理的と精神的の両方に落ちたらしい。
あと、メロスがダークホースという魔物だということをエマさんから聞いた。いつの間にか、俺がテイムしたことになっている。その場のノリで名付けただけなんだけどね。
テイム後に、肉体強化剤を注入したことによって、普通なら死んでもおかしくないが、メロスは、生き残り成長してしまった。
メロスが特別なのか、肉体強化剤に耐えた魔物は、メロスだけ。野生の魔物に肉体強化剤を与える実験したのだが...2時間ほど暴れて死んだ。要観察の上、非常に興味深い研究対象であることは間違いない。
「どんな歓迎を受けるのか...エマさん、ニコルさん、ステラちゃんは、フードを被って。門に接近したら、ソフィアさんとジュシカさんのが作る影の中に潜ること。クレアさんの話しでは、この街だけでなく、アルディア王国全土が怨敵になりうるぞ。」
ゆっくり馬車を走らせたため、時間を要したが、とりあえず、長蛇の列に並ぶ俺たち。あえて、姿をさらし、メロスに好物であるリンゴを与えていると門兵が走ってこちらにくるのが見える。
「そこの者。お尋ねしたいことある。良いだろうか?」
この世界では、上からの口調で話すのが普通なのか?いや、これが普通なのか?日本にいると、こんな高圧的に声をかけられることはない。
俺は、口角をあげ、つい笑ってしまう。
「くふっ。くふふふっ。良くないですね。ここで話すことは一切ありません。お引き取りください。」
まさか、断られると思っていなかったのか、門兵は立ちすくむ。バカなやつ。ここで俺たちを強制連行すれば、印象がますます悪くなる。こちらには、伯爵ご息女が泣いて懇願する物を持っているのだ。
「い、いや...しかし、そうはいかないのだ。貴様たちがナイン殿一行であるならば、お連れしろと言われておる。」
ふーん。いちいち癇に障る話し方だな。
「それなら、あなたにその命令を下した者に伝えてください。私たちは、子爵家の次女のイリアさんとクレイモラン伯爵家の長女のクレアさんが揃ってお迎えに来なければ、引き返します。と。」
顔をしかめて、俺をにらむ門兵。ちゃんとした教育を受けていないのでは?俺たちを不機嫌にさせる作戦か?
「分かった。その場で待ってろ。」
吐き捨てるように言ったのち、門の方へ、走り去っていく。
まともな村や街がないのか?どうなってんの、この世界。
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