第15話 ルイズ
※ルイズ視点
里を追い出された後からも地獄だった。
生きる気力がなく、道端で倒れているところに奴隷商人に保護され、売られる。買い取った人間からは、毎日叩かれ、心が壊れた。唯一救いなのが犯されなかったことだろうか…。
買い主に捨てられた後は、どこか死ねる場所を探しにさまよう。火で炙られ、鞭で叩かれたことで、以前の姿とは別人。醜い姿。人の目につかないよう、息を殺し、隠れるように歩いた。
さまよっていると、最果ての地に移動していた集団がいた。その集団は、皆、闇を抱えているのが肌で感じとれた。私と同じ、もしくはそれ以上に酷い仕打ちを受けたかもしれない。惹かれるように、集団に入り、最果ての地で最期を迎えようと決めた。
村にも入れてもらえない集団。人間の血が半分混ざった獣人、蔑まれ、半端者となじられ、門前払いされる日々。一人、そしてまた一人、倒れて死んでいく。魔物が襲ってきたら戦うのではなく、生贄として...本人たちは、死にたがって喜んで魔物に食われていく。そうやって魔物の脅威から逃げて、人間からも逃げて、最果ての地に着いた。
最果ての地で死を望んでいた私だったが、アリエスから救世主の話しを聞いていたこともあって1度見たくなっていた。2日くらいだろうか、突如、その男は現れた。
平凡な顔の若い男。黒髪くらいしか特徴のない人間。これが救世主?確かに突然、壁の向こうから消えたり現れたりする。ご飯もくれる。ただそれだけだ。
それだけの存在だったはず。
でも、違った。
誰より憎しみもつ人間だった。
私たちを憎しみから解放すると宣言した男。
憎しみには憎しみを。
彼の姿を見ていると心が踊る。
宣言してからは、様々なことがあった。死にかけるのは当然。理不尽までに強いキメラたちを駆逐していく日々。とても楽しかった。私の火で爛れた顔を見ても、嫌な顔をせず、心配してくれるナイン様。とても優しい。好き。愛している。
キメラを作って自滅したエタンセルという国を見つけてからは、生活の質が良くなったりと充実した日々を過ごしたと思う。さらに、エタンセルでは、生命の水。欠損が治すことは出来ないが、負傷した箇所を治す水が発見された。とても幸運だった。治療実験には、進んで立候補し、治療を受けた。治療といっても、生命の水を身体にかけるだけ。見る見るうちに以前の姿に戻っていくのが分かって、私は歓喜した。
「そして、私は影になった...ふふっ」
元の姿に戻ったところで、特に日常は変わらない。でも、ナイン様が居たから、出会ったから、存在したから、私は生まれ変わった。だからナイン様の為に生きよう、死のうと決意した。
過去のことを思い出しながら、村の長の家まで音を立てず、姿を見せることなく駆けていく。
「見つけた。あの建物中にいる。気配が複数あるが問題無い。」
部下の狐の獣人であるソフィアとジュシカと合流し、影移動のスキルを使用し、建物の中に侵入。有無を言わさず、村長と呼ばれる人間以外、好んで使う武器スキレットで何度も刺し殺す。
「お、お、お、お前たち、は、何者だっ!こ、こんなことして...タダで済むと思うなよォっ!!」
「別に、何も思わないわよ。貴様ら人間が死んでも。生きているだけで邪魔な存在なんだから、死ぬのが当たり前でしょ?」
「な、何を言って...がァァァっ!はっ、はっ、は」
「お前と話している時間が無駄。私に従わないのなら、もう一突きするけど、どうする?ふふっ」
苦しそうな顔、脂汗で顔がびちゃびちゃで、過呼吸を起こしている。それを見ている優越感に浸れる。ノーラの拷問には、特に興味が湧かなかったが...
「なるほど。自分の手で少しずつ、痛みを与えていくと楽しいかも...。ノーラたちの気持ちが少し分かったかも。」
ソフィアとジュシカに村長を縄で縛ってから遊ぶよう指示する。私は、成功したことを伝えるため、赤い煙を出す発煙筒に火をつける。
「ナイン様、喜んでくれるかな...ふふっ」
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