第13話 情報
支援部隊の一員として、走り回る俺の傍には、護衛する虎の獣人セレナさんと、ハーフエルフのフレアさんがいる。この2人は、護衛としての役目にしている理由がある。戦闘能力が最も優れている2人。どちらが強いか分からない。模擬戦では、未だに引き分け。勝敗がつかないほど実力が拮抗している。
ちなみに、虎の獣人セレナさんは、オレンジ色の髪をしており、勝気な性格で大雑把で男勝り。ハーフエルフのフレアさんは、金髪でポニーテールをしており、物静かな人だ。
「個人の最大戦力を俺の護衛にして、本当に大丈夫?」
戻ってきたノーラさんの部隊と斥候のリーダーのルイズさんへの支援を終え、アリエスさんのもとへ戻る。
「最大戦力だからこそ、御身を護るのです。本当は私がやりたい...やりたいですが...、フレア代わりませんか?」
アリエスさんがフレアさんへ近づき交渉を始める。
「いやよ。この場所は譲らないわ。絶対に。」
フレアさんから拒否されたアリエスさんは、セレナさんの方を見て口を開くが、その口に銃を突っ込まれる。
「アタイも嫌だね。それにこれは全員で決めたことだ。殺すぞっ?」
「お、落ち着いて、ねっ?セレナ。」
セレナの腕を掴み、懇願する俺。唯一、呼び捨てにしているセレナ。本人からそうしてくれと言われたから。その方が特別感があって気分が良いみたい。
「あー、ナイン様に言われたら辞めるけどよー、もうちょっと、こう、ぎゅっと抱き締めて欲しいんだが。」
俺はヒロインじゃねぇ!って言いたい。セレナの要求を飲むと、反感を買ってしまいかねない。事実、フレアさんが刀を抜き、セレナの首筋に当てている。
「いい加減、その口を閉じなよ。ナイン様に馴れ馴れしいのよ。セレナ...!」
「全くその通りです。もっとナイン様を、敬いなさい!」
「ちょーい、ちょい、ちょい。やめて、やめて。後でこっそりフレアにはシュークリームあげるから、刀下ろして。」
「それなら...仕方ないね。後で絶対シュークリームだからね。」
甘党のフレアさん。シュークリームという賄賂で機嫌がなおった。チョロいぜ!刀を首筋に当てられていたセレナは、避けられる自信があるのか、獰猛な笑みをしていた。
「ナイン様、エタンセルに帰ったらなんかご褒美くれよ。ここで暴れなかったんだから。」
「えーっ、嫌だ。どうせ身体が目的でしょ?」
「もちろんさ!」
「死ね!」
本当になんなのこの人。セレナに蹴りを入れてから、補給物資がある場所へ行く。シュークリームを取り行くついでに、ゲートの設置の様子の確認をし、支援部隊の副隊長、犬の獣人シェリーさんに声をかける。
「シェリーさん、お疲れ様。そろそろ、ミィちゃんの部隊が戻ってくると思うから、受け入れの準備をしよう。」
「かしこまりした。我が主。」
視力が悪くメガネをかけているシェリーさん。知的で正しく秘書って感じの人。ノートパソコンで、データー入力をしてくれている。日本から持ち込んだ物のひとつ。パソコンの使い方をマスターしてからというもの、手書きをやめて、全てデーターで保存している。
「シェリーさんは、使用した物資とその数を入力をお願い。他のみんなは、持っていく物資の名前と数をシェリーさんに報告してね。」
「了解しました!」
支援部隊が慌ただしくなってきた。これもまたいい経験になるに違いない。
支援部隊の構成は10名。内5名は犬の獣人。残り5名は、兎の獣人。兎の獣人は、見た目穏やかそうに見えるけど、力持ちで働き屋さん。
ミィちゃん達は、火の粉で汚れているだろうから、水の準備や、傷を負ってしまった場合の回復薬など、考えうる物を各一人ずつ支給出来るよう用意していく。
「おや、ミィたちの部隊が戻ってくるぞ?」
セレナの報告を受け、ミィちゃんの部隊を向かい入れる。
「たっだいまー!ナイン様っ!」
笑顔で手を振るミィちゃんに手を振り返し、報告を受けながら汚れを落とすのを手伝う。
ミィちゃんの部隊は、隊長がミィちゃん。副隊長は、ステラちゃんの計10名で構成されており、工作や陽動、救助などを行う特殊部隊である。
「なるほどね...。戦闘になったのは、ミィちゃんの部隊だったのか。エマさん達と会わなかった?」
「会ったよー。私たちの代わりに冒険者たちを殺していると思う。情報を先に本陣に持ち帰りなさいって言われたの。」
「そうか...。エマさんが、そう判断したのであれば、すぐ情報をすり合わせて、進軍しよう。」
「やったー!私たちも、もちろん参加していいよね?」
「もちろんさ。思う存分暴れて来るといいよ。」
ミィちゃんに着替えの服を渡して、少し休むよう指示。報告のあったおおよそ人口、戦力、地形、建物を、拷問された人間が話した内容と照らし合わせる。
「おおよそ、数500、戦力、冒険者30、地形、平ら、木造建築、重要人物、1番大きい建物、壁、土、白色。」
報告のすり合わせが完了し、アリエスさんに伝え、進軍の許可を出す。
さぁ、蹂躙の時間だァ!
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