第12話 支援部隊


 キメラの駆逐による問題が発生したが、対応可能ということで、目の前の戦いに思考を集中する。


 「エタンセルへの帰還メンバーの選考は、目の前の村を潰してから決めよう。おっ、火が巡り始めたみたいだ。ここからでも、見えるもんなんだな…。」


 ミィちゃんの部隊が農作物に火を放ち、村人の注意を引きつける。成功なら発煙筒(赤い煙)を上空に向け放つよう指示を出していたが、見事成功したみたいだ。

 人さらいの部隊、村の調査部隊が陣地に戻り次第、情報のすり合わせをし、本格的に進軍する予定。


 「ナイン様!緑の煙が確認されました!どこの部隊かは不明です!」


 発煙筒(緑の煙)は、交戦もしくは襲撃にあった場合、放つよう伝えていたが...。


 「アリエスさんの部隊は、イレーナさん、サリーちゃんの部隊を守護!エマさんの部隊は、交戦中の部隊のフォローに至急動いて!こんなところで死人を出すな、これは命令だ!!」


 エマさんの部隊の者たちが、村の方へ駆け出す。さすが、獣人。足が早い。

 アリエスさんの部隊は、ハーフエルフで構成されており、遠距離の攻撃を主としている。

 各部隊、得意とする能力で振り分けている。ちなみにエマさんの部隊は、遊撃隊。オールマイティにこなせる者が多く所属しており、専売特化の能力はないが、そつなく何でもこなす。しかも高いレベルで。頼もしい限りである。


 「アリエスさん、私も村に行っていい?」


 「ダメです。絶対に許しません。安全が確認出来るまで、決してここから動いてはいけません!」


 鋭い眼光に、強い口調のアリエスさん。やはり俺では力不足なのか...。剣を振るう筋力がなく、魔力が宿っていないため、魔法も使えない。後方支援部隊のリーダーである俺は、ただ待っているだけ。


 「分かったよ...。戻って来る部隊のために、色々と準備をしてくるから全体の指揮お願い。」


 「はい...。王であるナイン様を戦場で働かせるのは、今でも反対です。お考え頂けませんか?」


 アリエスさんの発言に、俺は顔を横に振る。


 「共犯者なんだ、私たちは。だからついて行き、一緒に戦うんだ。この考えは、アリエスさんに反対されても変えないよ。」


 「...分かりました。くれぐれも戦闘に参加しないようお願いします。」


 「分かったよ、アリエスさん。」


 過去に、キメラとの戦闘に参加して死にかけて以来、全員、俺に対して異常な程、過保護になった。自分が悪いんだけど、納得いかない。

 俺が、不貞腐れているとノーラさんの部隊が戻ってきた。


 「ただいま戻りましたわ、ナイン様。」


 「おかえり、ノーラさん...。何故血まみれに?」


 服の至るところに血が付着しているノーラさん。思っていたより早い帰還だが、何があったのか?


 「人間を攫う際に、目撃者がいたので始末しました。その時の返り血ですわ。ふふっ...」


 「そっかー、それなら仕方ないね。テントの中に着替えの用意があるよ。」


 人間を殺しても動揺がない。ノーラさんだけでなく、ここにいる全員。むしろ快感になっているように見える。


 「ありがとうございます。ナイン様!エリ、連れてきた人間を椅子に縛っておいて。」


 ノーラさんの部隊の1人、赤猫の獣人エリさんが村人を椅子に縛り付ける。


 「ナイン様、完了したっす!」


 可愛い見た目だが、ドSなエリさん。ノーラさんの部隊は、ドS集団。やること全て、残忍である。


 「ありがとう、エリさん。エリさんも、着替えてきたら?」


 「自分は、大丈夫っす!血の匂い好きなんで!えへっ。」


 「そっかー。ならいいか…。それで、その人間、死にかけてない?」


 「引きずって来たので、ボロボロっす。まだ辛うじて生きているっすよ?」


 椅子に縛られている人間を見ると、手足の骨を折って、抵抗出来ないようにしたようだ。くふっ、笑える。


 「それじゃあ、拷問を任せるよ。」


 「了解っす!ナイン様に喜んでもらえるように、じっくり情報を引き出すっす。」


 笑顔で敬礼するエリさん。エリさんの双子であるリエさんは、深くお辞儀している。リエさんは、無口。綺麗なお姉さんって感じ。全く似ていないが、同じ母親から産まれたとの事。父親が違うけど。

 俺は、リエさんに労いの言葉をかけてから、後方支援部隊の一員として、戻ってきた人たちへタオルなどを持って走り回る。

 この行動が、何故か喜ばれる。エマさん曰く、尊敬するナイン様直々にお世話されると嬉しくて興奮するらしい。変態だな。俺もだが、みんなも頭おかしいと思う。

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