第29話 だが、断る!
「うーん...それは交渉になっておりませんよ?私は、あなた方の価値を知らない。男3人売ったところで価値がないのであれば、そちらの2人の女性を売った方が利益がでますよね?まだ、ご自分たちの立場が分かっていないのですか?」
リーダーの前に出てきた女性。見た目は、普通の冒険者の格好だが、仕草に品がある。
「申し遅れたこと、ここに深く謝罪致します。私は、ホープ・フォン・クレイモラン伯爵の一人娘、長女のクレア・フォン・クレイモランでございます。」
へぇ。だから何?って感じだけど、ここは話しを合わせるか...。
「お初にお目にかかります。私は、しがない旅人のナインと申します。して、伯爵様のご息女、どのような御用件ですか?」
「私の全ての権限を自由に使えるよう手配致しますわ。それと、ここであったこと全て不問にいたします。これ以上、お望みとあらば、私が叶えられる範囲で実現致します。」
この辺りが引き時かな...。
「分かりました。そのお返事が本当であれば、領内に入ってから、盗品をお渡しても良いですよね?」
「はい、問題ございません。」
伯爵の長女ことクレアさんが頭を下げる。
「では、盗品の交渉は、これにてお終いということで。さて、私を殺そうとした者、なんの罪も無い女性を監視したことについて、申し開きありますか?」
「わ、私は、殺してくれてか、構わない!もう、クレア様に頭を下げさせるのはやめてくれ!」
喚き散らす、グレッグを俺は心底飽きられた。本当に、バカなんだな。
「分かりました。本人がそう言うのであれば、私を殺そうとした者は、処刑致します。もちろん、私がするのではなく、そちら女性が首撥ねてください。」
「ひぇっ...無理よ、いえ、無理です...で、出来ません。」
とんがり帽子を被っているから、勝手に魔法使いだと思い込むのは良くない。偽装しているかもしれない。それなら、グレッグの首を落とす際に見極めればいい。
「はぁぁ。グレッグさん本人が望んでいるのですよ?それとあなたの名前は?」
「い、い...」
怯えて、声が出ない様子。にも見えるが、偽装しているかもしれない。相手は、俺のことを信用していない。俺も相手を信じていない。この世界で信用して信頼出来るのは85人だけ。
「クレアさん、そちらの女性の名前を教えてください。」
「教えたら罪は軽くなりますでしょうか?」
「軽く?分かりました。一考しましょう。」
「イリア・フォン・カルデア。子爵の次女です。」
頭を下げたままのクレアさん。この人を見習って、頭を下げろよ、イリアさん。グレッグ以外の男は、地面に頭を擦り付けているぞ?
「そうですか。教えて頂き誠にありがとうございます。グレッグさんの命は、取らないことにします。イリアさん、グレッグさんの腕2本、切り落としてください。このナイフで。」
「お、お待ちください!は、発言をお許しを。私の名は、ルージュでございます。グレッグの罪を半分、半分私に償わせて頂けないでしょうか?」
ようやく事情が呑み込めて、言葉遣いが変わるリーダー的存在の男ことルージュさん。初めからそうしろよ。
「せ、拙者は、ウンケイと申す。御館様に拾われた身。何か拙者に罰を与えてください。」
アホか、こいつ。罰を皆んなで背負うから軽くしろと言っているもんだぞ?俺は、そこまで甘くない。
「分かりました。ウンケイさん、ルージュさんの右腕、イリアさんの左腕を切り落としてください。グレッグさんの罪はこれで終いにしましょう。」
「い、イヤよ、なんでわ、私が切られないといけないわけ?意味わかんない!やだ、やだ、ヤダよ!助けて、クレア様!」
「ッ!ナイン様、どうか、考え直して頂けませんでしょうか?」
はぁ、若い。ここで、イリアさんの左腕とルージュさんの右腕を切り落とせば、全て収まるのに。ここは、もう、俺が折れるしかないか...
「だが、断る!」
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