第2章 21話 言葉の刃
ヘイホーの弟子であるマシューはボコボコにされている。顔はひどく腫れていて出会ったときの面影がない。割とかっこいいやつだったのにな。
カイアとオルテカはごめんなさいと繰り返し呟いている。体の病より心の病が怖いよね。
あと2人ともマリアじゃなくて俺に向かって謝ってないか? マリアは一体何をしたんだろう。
まぁ、そんな些細な事は置いておいて、いわゆる落とし前を付けにコンマンの所に向かう事にした。
SIde モン
コンマンの野郎の所にカチコミをかけに走っている俺は、さっきから体が軽い事を確信する。いつもより早く走れている。放火を止めるために三馬鹿を捕縛したときからだ。隣にいるキーもそう思っている様だ。
なんだ? 俺たちの何が変わったんだ? コンマンのところから離れて……そうか! 俺は正義の力に目覚めたんだ! 今までのケチな悪行をやめて、あの兄さんについて行くと決めた時から、俺とキーは覚醒したんだな。
閑話休題。
当事者であるヘイホーとマリア、それにいつかは黒くなくても三連星と呼ばれて欲しい三馬鹿、そしてモンとキーというメンバーで、コンマンの所についた。深夜ではあったが、勢いよくノックし、呼びかけた。
「コンマンさん、助けて下さい。うちの宿が大変なんです」
「こんな夜中にどうしたんですか? タツヤさん。まさか宿が燃えたりとか?」
もう自分がしていることを隠す気が全くないのか、そんな風に聞いてくるコンマン。
「いえ、連日部屋が満室で唯一、人が入らなかったスイートルームもサウナに興味を示した領主様がうちに泊まりたいと言ってきまして、その時に使おうと思ってます。もう忙しくて忙しくて。うちに泊まりたいのに、泊まれないからしようがなくコンマンさんのところに行くなんて恨み言をお客様に言われる始末で」
「そんな事を言いにわざわざこんな時間に来たのか?」
「いいえまさか、うちの宿に火を付けようとしたものが居ましてね、捕まえてよく見るとお宅の従業員だったので連れて来たんですよ。おい!」
達也がそういうと、3人が暗がりから出てきた。
「ぼんぱんだんじっぱじしばじた(コンマンさん失敗しました)」
「「ごめんなさいごめんなさい。2度と自分が大切とか言いません。タツヤ様が世界の救世主で恩人でごめんなさいごめんなさい……」」
ポーションが必要なくらい怪我をしたマシューと、状態異常回復ポーションでも治るか心配なオルテカとカイアだ。
マリア本当に何してくれてるの?俺が悪役みたいじゃん。
「おや、これは元ヘイホーの宿の従業員だった3人じゃないですか?わかるぞお前達。自分達を見捨てたヘイホーが憎かったんだな。それで私の所を辞めて・・・・・・・火を付けに行ったのか?」
「辞めて? 3人はコンマンさんの指示で火を付けたと言いましたが。逆らえば命を奪うと言う劣悪な契約魔法で縛って、三人に言うことを聞かせていたと」
「そんな事実は有りませんよ。無学な貴方は知らないでしょうが、命を奪うなど契約魔法でもできませんからね。大方読み間違えでもしたんじゃないですか? それに契約魔法は、教会でするのが常識です。お前ら、私はお前らと教会に行ったことがあったか?」
3人が横に首を振るとコンマンは勝ち誇った顔をして続けていった。
「こんな時間に言い掛かりを付けに来て、これだから邪道の宿屋は困る。その3人はうちとはもう関係無いから憲兵に突き出すなりなんなり勝手にして下さいよ」
「3人は、貴方が雇用契約書と言って出したものにサインをしたと言っている。明日、教会の司祭様を連れてそれが契約魔法を騙るものでは無いか、確認して貰います」
「す、好きにしたらいい、そんなものは存在しないのだからな。大方3人の記憶違いだろう」
明らかに顔に出てるな、なんか大商人の息子の割に爪が甘いんだよな。今まで鳴りを潜めてきた2人が口を開いた。
「コンマン、アンタはいけすかねえやつだったけど、そこまでやる奴じゃ無かっただろう? 一体なんで?」
「……」
「コンマンさん」
「なんだ? 我が愛しのマリア」
「私ね、貴方のその粘着質な所大っ嫌い。今までは3人がお世話になってたし、同じ宿屋だから話してましたけど、もう2度と道で会っても話しかけないで下さいね」
クリティカルヒット! 見えない言葉の刃がコンマンを切り裂いた。彼は膝を突きポツリと一言出ていけと呟いたあとキレた。
「私の宿から出ていけ! 警備員を呼ぶぞこんな夜更けに人の宿に来やがって! 何がしたい? 俺になんの恨みがあるって言うんだ! お前ら全員死んでしまえー!」
「あー、帰ります! 帰りますから落ち着いてください。あとこの3人も貰って良いんですね。貴方のところはやめているんですよね?」
「犯罪者など知らん。帰れー‼︎」
話にならなくなったコンマンに別れを告げ、帰り際にモンとキーに目配せをして、俺たちは帰った。この一連の出来事にフラグかもしれないが俺は思った事を言ってしまった。
「勝ったな」と。
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