第6話 修行シーンと大人の事情

 俺が冒険者ギルドに着き、登録の手続きで支援魔術師と書くと、受付嬢にこの人可哀想みたいな目で見られながら、冒険者登録を終えた。

 本当に良いんですねって3回も聞くことないじゃないか。ホント不遇職なんだな。

 レオが悪気なしに『赤き翼』の仮メンバーと言う話をするとさっきの受付嬢さんに今度は凄まじい嫌悪感を含む目で見られた。

 ギルド内の酒場でも、弱みを握ったとか金を積んだとか、俺にもレオたちにも失礼なことが周りから聞こえて来た。


 その時アメリアが「……燃やす」と言いながら魔力を練っていたが止めた。赤き翼の分も含めて、見返すのは俺でなければならないからだ。

 それから俺はクエストを発注する。


・クエスト発注

[教官募集。

 支援術士が冒険者になるための訓練を依頼したい。

 期間は長期。依頼料は来てくれた人と応相談。

 ギルドの関係者がいい]


 俺が発注したクエストはこうだ。ギルドの職員なら俺を騙して金だけを取ることもないだろうしと思っている。

 募集して2日冷やかしのみで誰も来なかったが、3日目に巨漢の未だ現役と言っても信じるような、筋肉質な老人がギルドにいる俺に接触してきた。


「ワシの名はオウル! 小遣い稼ぎに来た。現役時代はソロでSランクじゃった。この町で前のギルド長をやっとった。若いの、わしにしないか?」


「Sランクで先代のギルド長に払える金が新人冒険者にあると思います? 習う事は基礎的なことだけでいいんでお断『1日2杯飲ませてくれればいい』わりし……へっ?」


 老人? は併設の酒場にあるエールを掲げてそういった。最初だけレオに頼めば払えない依頼料じゃない。育成費として許してもらおう。


「本当に良いんですか?実は高い酒とかじゃないですよね?」


「普通にそこのエールじゃよ。あと可愛いおねーちゃんが酌してくれれば尚いいが、贅沢は言うまい。契約成立ということで良いかな?」


「はい!」


「途中で逃げることは許さんからな」


 未だ凄みを感じされるアウルさんの本気なのか冗談なのか、とにかく彼の気が変わらないうちに俺はぶんぶんと首を縦に振った。ともかく最高の教官を早々にゲットして、俺の訓練が始まった。


 訓練は、略式で行こうと思う。筆者が描きたいのは、あくまで宿屋だ。礎が欲しいので、冒険者パートを書いているがタイトルと違うと絶対思われるし、そんなものを読者様に見せるのも申し訳ない。

(メタい)


 達也視点日記帳


 一つ一つ欠点を潰していく。

 まず初めに師匠から言われ(教官と呼ぶより喜ぶ)毎日ランニングをした。基礎体力は当然だと俺も思う。

 支援魔法はスキルを得てすぐに使えたが、やはり集中しないと霧散してしまう。


 毎日毎日ずっと走りながら魔力を練る。動きながら魔法を行使しようとする。

 5ヶ月ほどして、1日に走る距離もフルマラソンを超えたあたりで、走りながら魔法を使えるようになった。

 他の人が動きながら使えるようになるのは、恐らく慣れだ。上級職になるとそういうスキルがつくのかもしれないが、俺にも魔力操作というスキルがついていて、レベルも6まで上がった。きっとこれが関係している。

 8ヶ月して、詠唱短縮も覚えた。詠唱破棄は難しいので、まだ習得できていない。


 次は支援魔法の時間の問題、これには秘策があった。腕時計である。

 幸い手巻き充電のものを使っていたので壊れない限り動く。師匠に支援魔法を使い、効果が何分か検証。そして未だ欠かさず続けているランニング中に時計を見ずに1分を計る。

 前の世界で競馬の騎手が体内時計を鍛えた話を思い出してのチャレンジだ。

 1分ができたら2分と、時間を増やしていき、5分を誤差なしで10連続成功させた時にスキル体内時計を手に入れた。そこからは誤差なく感覚で測れるようになった。それにより継続支援が可能になった。


 射程に関してはまだ研究中だが、魔力操作を覚える前はシャワーのようにただ放たれていた支援魔法が、魔力操作を覚えてからはイメージで形状を変えることに成功した。

 以前アメリアが見せてくれたファイヤーボールと同じ形や勢いのものが出来た。『サポートボール』とでも言おうか? 要は支援魔術を飛ばせるようになった。ただ、魔力操作が甘いのか時折支援効果が30〜40%になり、質が落ちる場合がある。コレについては、魔力操作を上げていけばなんとかなるだろう。


 目に見える部分だけという欠点についてはお気づきかも知れないが、鷹の目と並列視野だ。

 鷹の目ではあくまで上から俯瞰で見ている感覚だが、並列視野はゴブリン戦後に落ち着いて検証していると、ただ横に視界が広がる物ではなく、眼を増やせる物だった。

 鷹の目の範囲にスキルレベルで増やした分の目を設置することができたのだ。今はスキルレベル3なので上に一つ。後ろに一つ設置している。もう一つは保留。慣れないと酔うから。


 そして一つ前の理由から俺は自分に支援魔法をかけることができた。

 視界で自分の姿は捉えてるからね。因みに鏡を見てもできた。なんで誰も試さなかったんだよ?どんだけ不遇だと思ってるんだよ。工夫しろよ‼︎ と少し憤った。

 自分にかける場合は何と100%増しなのだ。つまり2倍。杖術を師匠から習い、それなりに戦えるようになった。

 この訓練が1番死ぬかと思った。あの人に現役とか引退とかいう言葉を使って欲しく無い。もっと化け物だったという、若かりし頃に会わなくてよかったよ。


 ラノベ知識だが、近接で戦えない後衛職など魔力が切れたら使えないからな。俺はそれなりに戦える。

 自己強化込みなら上がりたてのC級冒険者並みに戦えると言うお墨付きを師匠にもらった。それが訓練開始から9ヶ月目。


 最後の仕上げとして、同じEランク冒険者に臨時パーティーを組んで討伐依頼をこなそうと思った。(最初はFだったが、ランニング中に薬草摘みをして、Eに上がりました)


「おっさん、いや薬草摘みさん、その年で支援術師で、Eランクって、別の仕事探した方がいいんじゃないですか?」


「そこを何とか頼むよ。足を引っ張らないようにはするから」


「わしからも頼む弟子のためなんじゃあ」


 師匠が頼んでくれるまで、睨みつける15歳の男女2人の新人パーティーに大いに侮られた。師匠の殺気だだ漏れなお願い・・で何とかウルフの討伐に行くことができた。そこでハイウルフが率いるウルフの群れ(D級パーティー推奨)を前衛として鉄杖で倒し(物理)支援魔術を途切れることなくかけ続けた事により、戦闘後に変化が起こった。


「支援術師……というか貴方様を舐めてました。俺達だけでは確実に死んでました。舐めたこと言ってすみませんでした」


 明るく爽やかな、そして支援魔術師だが役に立つそんな俺が見直されるはずのプランだったが、震えながら土下座された。解せぬ。


 その後はギルドの書庫にも通い魔物の知識も蓄える。知識は財産だから。そして10ヶ月が過ぎランクも前回のウルフの群れ討伐やその後何度か受けた討伐依頼でDに上がり、期限までは2ヶ月あるが丁度遠征から帰って来た、『赤き翼』のみんなにこれまでの成果を初めて見せた。

 それは充分に彼らを驚かせる事が出来て、俺は正式に『赤き翼』に加入することが決まった。


……三年後、B級パーティ赤き翼、魔の森にて。




簡単ステータス変更表


タツヤ=ニノミヤ


スキル

鷹の目lv4

並列視野lv4

交渉人lv5

指揮lv4

体内時計Lv-

杖術lv4

ホスピタリティlv5



【赤き翼】上位職に転職。


レオナルド・剣士→聖剣士

スミス・盗賊→大泥棒

ソフィア・僧侶→神聖司祭

アメリア・魔法使い→魔導士

ダンダル・鍛冶士→バトルスミス

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