2章 11話 異世界知識でテンプレ



 良い酒場がいい宿屋になるわけでは無い。酒場の客層が宿屋と合っていなければ、それは顕著に現れてくる。


 今のオールインのメイン層は、町に数少ないBランクやCランクパーティや割と成功した行商人という客層だ。

 うちの宿は、はっきり言って他の宿より少し高い。優れたサービス、美味しい料理、綺麗な宿、当たり前だがそれがあれば宿は、繁盛する。


 今のウチに足りないのはやっぱり信用とブランドかな。ウチに泊まるのがステータスになるような。

 一晩金貨5枚のスイートルームが未だ使われてないのがなぁ。気合入れたのに。

 やはり、経営は初めてなので、すぐに上手くはいかないものだ。


 ちなみにコンマンからの客紹介という名の嫌がらせは続いていて、金を持っていない客が月に5人は来る。

 腹が立つので、泊めてもてなして働かせてリリースを繰り返してる。みんなでは無いが涙ぐんでこの恩は……とか言って帰っていく。


 さてそれはそれとして今日は、冒険者ギルドに来ている。ララの代わりを酒場に入れないといけないし。


「すみません、依頼をしたいのですが」


「はい、どう言ったご依頼で?」


 僕は依頼内容を書いた紙をギルドの女性従業員に渡した。

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宿『オールイン』

・酒場勤務 夕方から夜中までの間で働ける時間は応相談。

・ダブルワークOK

・料理の給仕と簡単な接客

・待遇面は時間と仕事の慣れで相談

・週1日からOK

・募集1〜2名

・面接あり

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真剣に依頼を確認する受付嬢。

少し見て、何やら考えてから言った。


「ダブルワークとは何ですか?」


「あぁ、掛け持ちって言うんですかね? メインの仕事がある人でも時間がある時に働きたい人がいれば良いなと思いまして。失礼ですがここは人が多い街ではないので」


「なるほど、それではこの依頼を張り出すことはできません」


「えっ、何故ですか?」


「私が受注するからですが何か?」 

「はっ?」


 思わず声が出てしまった、僕を尻目に受付嬢は続ける。


「一度やってみたかったんですよ。酒場の店員さん、ほらギルドの受付って硬いでしょ? オールインさんの酒場は治安もいいし、皆さん可愛い服も着てますし、あっ、服は経費で落ちます? 泊まっている方はお金持ちが多いし出会いの方もありそうですしそれに……」


「あの、落ち着いて下さい。貴方の熱意は非常に伝わりましたから」


 とりあえず猫を被ってくれ。ギルドの受付嬢さんはみんなこんな溜まってるのか? 普段はクールなお姉さんなのに分厚い猫が全部脱げてる。コホンと咳払いした受付嬢さんが何事も無かったかのように話す。


「それでは、面接を受けに行かせていただきますね。依頼の迅速な達成をお祈りしています。今後のロキ君のためにも」


(怖えー。自分の欲望のために将来の冒険者の進路まで使ってきやがった。本来こう言う脅しには屈しないけど採用しよう。あとが怖いし、ギルドの受付やってるだけあってこの人能力は高いんだよね。受付とか読み書き計算必須だろうし美人だし)


 僕はクールビューティー(普段は)さんの採用を心の中で決めた。


 さぁ、宿にさける人員も増えたし、お約束の異世界知識でも使って、集客をあげたいところだ。

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「おい、本当にこんな感じでいいのか?」


『はい、バッチリです。完成したら遊びに来て下さいね。宿泊者限定ですが、親方は別ですから」


 中庭の井戸の近くには小さめの浴槽が置かれ、その隣にはログハウス調の断熱、保温を目的とした建物が立っている。


 建物に入ると、一角に大きな石が敷き詰められており、バランス良く敷き詰められており、1番下には火の魔道具が設置してある。

 作り方を知らなかったので石に水をかけて室内の蒸気を作っていく、野外のキャンプみたいなサウナだ。


 味の革命マヨネーズだと思った人も多いだろうが、あんなのを作ってきたラノベの諸先輩方、何でみんな作り方知ってるんですか?

 普通に知らないよ。


 卵と酢が入っている事はわかっていたけど、後の手順は知らないのでヘイホーにとんでも無いものを作らせてしまった挙句に気を遣わせてしまった。


「大将の故郷ではこんな物が流行っていたのか? いやっ、なんでもねえ」


 卵黄だけにするとか、酢の分量変えるとか、信じられない数実験したけど、まっずい。ほんと何かが足りないんだろうな。

 僕から味のイメージだけを聞いたヘイホーが依然鋭意作成中だ。あの残念な天才ならいつか完成させてくれるだろう。


 受付嬢のクールビューティー改め、ハナはファンも多く酒場の集客に加え冒険者相手に営業力もあり、宿泊客を1割ほど増やしてくれた。

 脅しに屈した仕返しに、超ミニスカートをオーダーした事を今では後悔している。本人は喜んでセクシー衣装を着こなしていたけどね。


「ご主人様! 何故ハナさんはあんなにセクシーな格好を制服に? 本当はああ言うのが好みなんですか?」


「おにいさ〜ん、わ・い・んも頼んでくれたら嬉しいな」


「おいおい話には聞いてたけど昼間の受付と全然違うじゃねえか。あの、媚びぬ退かぬ省みぬ、のハナがねー。あっ、ワイン追加で一本くれ」


 ララは落ち着いて。

だからそう言う店じゃないんだよ!


次はサウナで真っ当に客寄せをする。





 遅くなりましたが更新しました


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