第3話 その変態オヤジは私のようだ


 狐のお宿を去って俺は近隣の村へ向かった。冒険者時代に、奴隷商人から聞いた裏技の実践をするためだ。高級奴隷でも無ければ奴隷の扱いは酷いところの方が多く、今は高級奴隷を買う予算もない。


 それならばと、奴隷商人がやる手法を使うことにした。物価の安い所で口減らしのあるような村を探し、そこで購入して都会で高く売ると言う、安く買って高く売るまぁ商売の基本の様なものだ。


 俺は奴隷商人ではないから、他に売るためではないが安く従業員を手に入れるため、村へ向かった。

 何より奴隷は現代日本を生きて来たものとしては好きになれないから。


 訪れた村は想像の何倍も酷かった。俺がベルドラではなくこのファストの町の周辺に飛ばされていれば、もう生きていなかったかも知れない。


 ほとんど骨と皮だけの痩せ細った村人の中で、村長に会い、成人前の13〜14歳位の子供を集めて欲しいと伝える。


 ちなみにこの世界の成人は15歳である。

 成人するとジョブを得るので、あえてそれに引っ張られない様にするためにその年代を選んだのだが、村長は何故か汚物を見る様な目で見て来た。


 村の広場には7人ほどの子供とその親が、集まった。俺はある事に気付き村長に尋ねる。


「何故女の子しかいないんだ?」


「そう言った奴隷が欲しいのではないのでは? 1番高く買っていただける歳の者達を定めて来ましたし。あぁ、勿論自己申告ですが生娘だけを集めましたが。タツヤ様は男もイク方ですか?」


 あの汚物を見る目はその為か。まぁ、俺の言葉足らずが全ての原因だ。


「あーすまない。俺はこれから宿屋を開くんだ。集めるのは6人程度。纏った金は親元に置いていくが奴隷と違い、首輪も付けないし、奴隷紋も刻まない。先払いで家族に金が渡せて、渡した分の金を稼いだら自分の身柄も買い戻せる様な感じだ。その条件で、もう一度集めてもらえるか?これは手数料だ」


「はいぃ!失礼しましたぁ!」


 老齢の村長に銀貨を一枚弾くと死ぬんじゃないかってスピードでこの場から離れ民家をもう1度かけ周りに行った。


 それを聞いた、先に集められていた親娘は、さっきまでの引いた態度とは違い、自分の娘をこれでもかと言うくらいに、売り込みに来た。


「はぁ、鑑定とかの主人公能力が何故俺には無いんだろう」


 一人一人、本人と話して決めるといい血走る目の親を返した。条件を聞き、追加で男の子が5人来たが男手は畑に必要なのであまり出せないと村長に言われた。


 面接をした結果女の子3人、男の子1人の計四人が俺の従業員になることになった。1人金貨5枚で買えたが、これでもかなりの高額と喜ばれ、手数料でホクホクの村長も手のひらくるりだ。村を出ようとすると、1人の男の子が追いかけて来た。


「ねーちゃんを返せこの変態オヤジめ!」


 俺はヘイホーを連れて来たかなと、あたりを見回したが、俺しかいない。つまり変態親父は俺と言うことになる……


「たぁ!」


 短い掛け声と共に鉈が俺の頭めがけて振り下ろされる。間一髪、本当に髪の毛が切れるくらいに間一髪で、俺は鉈を避ける。


「この子供の母親はいるか!?」


 俺はこっそり自分に支援魔法を使い鉈を叩き落として子供を無力化してからそう呼びかけた。

 オドオドとしながらさっき、娘を売った1人が出てきて頭を擦り付ける。


「すみません。この子は姉のことを心配しただけなんです。どうか命だけはぁ」


「この子もいいか?金貨は同じだけ払う」


「へっ? はい! ぜひ!」


 問題児だったらしく、ヘッドハンギングかと思う頷きと笑顔で頷かれた。


 ふに落ちない、なにが起こっているかわからないと言った様子の少年は14歳の姉ララの弟でロキと言い、姉を心配して俺を襲ってきた様だ。


「俺が信用できないならお前もこい」


 そう伝えると少し大人しくなり、ついてくることが決まった。なんとまだ11歳で聞けばE級のモンスターくらいなら近接戦闘で一人で倒していたと言う。驚異の身体能力、ようやくテンプレを見つけた感じでテンションが上がる。


 こいつの事も、他の雇った奴等も、教育していこう。人を育てるのが1番難しいからな。

 とりあえず打倒コンマン、ファスト位置の宿屋を通過点にして、目標は変わらず世界に俺の宿を作る。

そのための最初の人材が集まったのだった。


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明日はお休みか、1話更新になります。明後日からまた2話、更新していきます。

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