閑話 ララの場合
Side ララ
私は自分の住む村にいた時は辛かった。正確に言えば辛いと言うことすらわから無くなっていた。
今年は収穫が悪く、飢餓で亡くなる人もかなりいた。何年かに一度はある事なので、そんな地獄でもそれは私の村の日常で、珍しいことではなかった。
ある日いかにも冒険者の魔法使いの様な格好をした人が村に訪れた。
「すまないが村長のところへ連れて行って欲しいんだけど」
「あの、すみません仕事を離れるとお父さんに怒られてしまいますので。村長の家はあっちの建物になります」
「おい! ララ、サボってんじゃねえ」
「ごめんね。ありがとう」
そう言ってその人は私に頭を下げてお礼を言い去って行った。人に頭を下げられるなんて初めての経験だ。
この村に人が来るのは珍しい。そして来たとすれば大体の目的は決まっているし同じだ。
「奴隷商人さんだよね。口減らしかぁ。良いとこに買ってもらえると良いんだけどな」
私は一人で呟いた。妙齢の女性は私の家では私だけだし。せめて優しい方に買ってもらえると良いなと考えていた。
悲観はしない。これが村の昔からの普通……だから。
村長が畑の前や、各家を回っている。そしてうちにも来た。
「13〜14歳くらいの、女性を御所望だ。身請け金は金貨5枚と他の奴隷商人より少し高いそうなので、村の為になるべく多くの娘を出してくれ」
村で奴隷が売れた時は、その家に7割、村長に1割、村に2割と決まっている。金貨5枚と聞いて、父から出た言葉はたった一言だった。
「行ってこい。しっかり見染められてこい」
そう言われて、母と一緒に指定の広場まで行った。母は泣いていた。私も泣きそうなのを堪えて大丈夫だよと振る舞う。
それがこの村の人と家族が生きる、最善であることはわかっているから。
広場に着くと、やっぱりさっきのお兄さんがいる。奴隷商人の格好ではないけど、やはりこの人が私たちを買いに来たんだろう。
「何故女の子しかいないんだ?」
「そう言った奴隷が欲しいのではないので? 1番高く買っていただける歳の者達を定めて来ましたし。あぁ、勿論自己申告ですが生娘だけを集めましたが。タツヤ様は男もイク方ですか?」
何やら揉めている様子だ。何かあったんだろうか?
「あーすまない。俺はこれから宿屋を開くんだ。集めるのは4〜6人程度。纏った金は親元に置いていくが奴隷と違い首輪も付けないし、奴隷紋も刻まない。先払いで家族に金が渡せて、渡した分の金を稼いだら自分の身柄も買い戻せる様な感じだ。その条件で、もう一度集めてもらえるか?これは手数料だ」
ホクホクでお金をもらいつつ自分のミスを消す為に大急ぎで村長が走っていく。もう50過ぎてるのに大丈夫かな?
説明の全ては理解できなかったがとてもいい条件の奴隷だったので、みんな我先にと掌返しのアピールを始める。
「あー、わかったわかった親は帰ってくれ。あんたらの娘と話すから」
しばらくして私の番が来た。
「名前は?」 「はい! ララです」
「元気がいいね」 「あっすみません」
「笑ってみて」
急に笑うなんてした事ないし、ここ暫くは笑っていない。
「この村の人たちは笑うの苦手だよね。ほら、こんな風に」
お兄さんは口を閉じたまま上品に笑った。
私も真似して笑ったけど顔の筋肉がいたい。
いつから笑ってなかったんだろう。
「はい、ありがとうございました。次の人どーぞ」
「あの、私何でもします。経験はありませんが夜伽とか教えていただければご主人様がどんな変態でもなんでもします。だから奴隷にして下さい。私の喜びは貴方が喜んでくれる事になります」
「へぇ」
このままではまずいと思った私はにじり寄ってしまった。そして混乱して訳の分からないことも言ってしまった。……また地道に働こう。
そうして他の人もお話が終わって、少したったらすぐに数人が選ばれた。
私はなんと合格だったらしい。友達のリリと、ルルの姉妹もいる。一緒に居られるなら少しは心強いな。
その後すぐに出発出来るならしたいと言われ、私は荷造りをした。風呂敷一枚で荷物は全て収まってしまった。
町に行ったら、どんなことがあるんだろう?そんな事を考えていると、私を含める買われた人達が、村長の所に集められた。
「いいか、くれぐれもタツヤ様の機嫌を損ねてはいかんぞ。あの方は今後も必要があれば村から購入を考えると言って下さった。気に入られる為に何でもしてくれ。おんしらには辛いと思うがこれも村の為じゃ」
「「「「はい」」」」
返事をしてご主人様と、合流して町に向かう。村を出る時に私の弟のロキが鉈でご主人様に切りかかった。
「姉ちゃんを返せこの変態オヤジめ!」
村でも強い方に入るロキをあっさりと、いなして倒した。無礼な事をしたロキも買ってくれた。良い人なのかなって思った。
変態オヤジって言われたのは結構ダメージみたいだった。
町に着くと改装中の建物の改装が終わってるところに通されて、信じられない歓迎をしてもらった。
ヘイホーさんと言う人が料理をどんどん運んで来て14年間で1番美味しいご飯を食べさせてもらえた。明日からは1日3食を食べることが出来るらしい。
さて、夜伽の確認をしたところ、奴隷じゃないから必要ないと言われてしまった。
「ア○リ○に何言われるか分からないし怖いしな」
ボソボソと何か他のことも言っていたが、気にはならなかった。それより奴隷じゃないなら私達何?って話だった。
宿屋をやろうが女性を多く選んだのはそう言うことって思うじゃないですか? 純潔の乙女から誘わせた罪は重いですよ。
あと、村長はホントに……まぁ、私も村の広場でご主人様が言っていたこと訳わからなかったんですけどね。今も全部はわからないし。
夜は今まで眠ったこともない様な立派な寝具で寝ました。夢ならば覚めないで欲しい。当たり前のことだけど、天国の様な今を知ってしまったから地獄に戻りたく無い。
「神様お願いします」
普段は祈る余裕なんて無くて、祈ることもない神様に祈りながら私は眠りについた。
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キリよく切ったんで、閑話がもう1話続きます。
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