第2章 プロローグ



 王都アルタイル、整備された街道に流行の最先端の服を着る余裕がある国民たち、広場には噴水が設置され、恋人達がその辺りのベンチに座る。

 中世ヨーロッパ調の建物といい清潔さ、洗練されたその街はまさに前世の花の都パリ。豊かな街その一言に尽きる。


 大商人や王国貴族そして王族も存在する王都、商業の最前線ともいえるこの街で、俺は宿屋としての、スタートを切る……はずだった。


 王都から2つ離れた街ベルドラでは100人以上の人が出入りし、酒場も内包され、宿泊スペースも30以上ある。

 王都でこの規模の建物を築くならゆうに日本円で10億は降らないだろう。そんな建物が最近新たに出来た。そう我らが竜の息吹のクランハウスだ。


 俺は元々円満に脱退し、俺が管理して溜め込んだいたパーティ予算の自分の分を退職金としてもらい、王都で勝負をかけるつもりだった。


 しようがないじゃん、クランハウスがみっともないとか無理だってわかってるし、お金? もちろんそこまではパーティ資金も貯めて無いよ! 出資者募ったんだよ。スポンサー付けたんだよ! 自分で売り込みに行って、したことない飛び込み営業したんだよ‼︎


 あの馬鹿! クランのことお前に任せるって、資金繰りから全部じゃねえか!


 ちなみに俺の宿屋の方にはスポンサーを付けられない。

 実績の無いものに、人は金を出してくれ無いし、何より高額な借金からスタートしたく無い。


さぁ、行くか。


 クランでの引き継ぎをある程度して今まで俺がやっていた雑用や手入れの為の人間を雇い、更に1ヶ月後、ベルドラの街から馬車で10日、ファストの町についた。


 通称始まりの町、過去の勇者が誕生したと言われるこの町は、新人冒険者や上を諦めた冒険者が集い、昼間から飲んだくれる冒険者の方が冒険に行くものよりも多い。

 雑多とした店や露店に歴史を感じさせる(単純に古い)建物は何十年前に舗装されたかわからなく、外を見ればヒビ割れた道と砂利道に溢れている。

 そこはまさに前世の教科書に出て来た発展途上国といった感じだ。全く発展させようと言う気は感じられないが。


 俺はここから成り上がる! って言うか地価や、物価的にここしか無理。


 俺は力強い足取りで唯一の不動産屋に行き、良い土地、物件を見に行くのだった。


「居抜きの宿とか売ってないかなー」


などと都合の良い事を考えるのだった。

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