第2章 24話 覚えていますか?この人たちを。

「えっ? コンマンのところが夜逃げ!? それで売りに出してると。ちなみにいくらですか? 金貨150枚? 儲け出てるんですかそれ?」


「なぁにあいつには、色々と苦労かけられたからな。ボッてやったわい。お主には世話になっておるから、安くしておくぞい。どうじゃ?」


「買います。即金で」


「毎度あり」


「思わぬ形で2号店が手に入ったな。しかし思ったより早く潰れたな」


 そうだ、念の為手紙を書いて置こうかな。無駄に恨まれてそうだし。全然顔出してないし、みんな(アメリア怒ってるだろうな)もう半年か……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ベルドラ、龍の息吹クランハウスにて。


「アル、なんか面白いことない? 長期の依頼を早めに終わらせちゃったんで休めって言われてて、暇なんだよね」


「無いですよ! こっちは忙しいんですから。休んでて下さいよ! あの依頼を超早で終わらせてけろっとしてるとか……もう、本当に自覚の無い化け物揃いって、タツヤさんが言った通りだよ」


 タツヤがベルドラから離れるときに雇われた雑務担当のアルは名前を出してからハッとする。そして目の前にはなんとも言えない、表情に変わったアメリアがいた。


「えっ…タツヤが何? あいつ、全然帰ってこないし、私たちの事なんてどうでも良いのかなって。そんな事ないよね私達は最高のパーティだったんだから」


龍の息吹の強気な『炎姫』も想い人の前だと変わるんだなーと髪を指でクルクルさせる姿を見てアルは思う。

 どう慰めようか思案していると、ある事を思い出した。


「そう言えば、タツヤさんから手紙きてましたよ。さっき届いたんであっちの郵便……」


 あれ? 2つ名って炎姫じゃなくて疾風だったっけ? と思うくらいのスピードでアメリアは目の前からいなくなっていた。


 「タツヤさん、確かにやり手だけどそこ迄心酔するような人ではなかったんだけどな」


 付き合いの短いアルはそんな事を思いながらアメリアを見送って雑務に戻った。



『拝啓、赤き翼の皆様

ベルドラは相変わらず賑やかだと思いますが、そちらはどうお過ごしでしょう?』


「固いわねー」


『私の方も静かな町で、静かに宿屋を始めるはずが、色々トラブルに巻き込まれて大変です。俺のせいじゃないよなこれ?』


「あんたの巻き込まれ体質よ。って言うかまた自分から首突っ込んだんじゃないの?」


『ゴタゴタが片付いたら、ベルドラに顔を出しに行くよ。一応クランマスターだしな』


「遅いのよ。エルフの一生は長くても、誰かを待つ気持ちは人間と変わらないのに」


 手紙に相槌を打つ、姿のアメリアはとても可愛らしく前述の二つ名で恐れられる娘には見えなかった。


「それではまた会える日を楽しみにしているよ。タツヤ=ニノミヤ」


「えっ? 終わり? これだけで?もっとこう……なんかないの?!」


 悲しみに沈んで顔を落とすとそこには達也からのもう一通の手紙が来ていた。勿体ぶってまだあるんじゃないかと宛名を見ると、アメリア個人!……ではなくダンダル個人への手紙だった。


「ダンダル……手紙よ。タツヤから」


 ダンダルの鍛冶小屋に怨嗟のこもった声が小さく響いた。


「なんじゃ珍しい。ここは熱いしむさいから来ないと言ってるのに。タツヤ絡みだからか?」


「……」


 ジッと無言で睨むアメリアに身震いしたダンダルは、促されるように鍛冶小屋から出て涼しい場所で読み出した。


『よぉダンダル。頼んでた物は出来たかい? まぁ素材が素材なんですぐには無理かもしれいが頼むよ。そう言えば流れ人の文化で『サウナ』と言う物を作ってな、これがまた美容や健康に良く何より酒に合う文化だ。もし暇なら届けて欲しいから依頼として出すから来てくれよ。そうだなアルに言ってクランからBランクパーティ1組くらい回してもらってくれ。まぁ暇ならでいいから』


「以上じゃ」


「なんでなの? 私には誘い文句も無いくせにこんなヒゲオヤジの方がいいって言うの? 美容と健康とBランクパーティ……ダンダル! 依頼された物は出来てるの?」


「あぁ。まだ全部じゃ無いけど、渡して微調整してくらいなら、もう」


「行くわよファストの街に! 護衛は赤き翼が受けるわ! あっ、ソフィアちょうど良いところに!」


「えっ、なんですか? アメリアさん怖い。なんか目が血走ってますけど」


 その形相はまるで鬼、気分は蛇に睨まれたカエル、普段狩っているモンスターの気持ちがわかったソフィアは黙って話を聞く。


「美容と健康にいい、流れ人の文化って興味ない?それにレオとのデートも最近いつも通りでしょ? たまには遠出の旅行とか、いいと思うんだけど、どう?」


「すごく興味あります。旅行いいですね! 流れ人の美容? あっ! タツヤさんのところ行くんですね。もー1人でも行っちゃえばいいのにアメリアさん可愛いんだから!」


 美容に興味があるのは古今東西現界異界、どこでも一緒のようで、それと同時に彼氏と遠出、そしてアメリアの想いを応援したい者としては、すぐに話に乗った。


「明後日……明日には立ちましょう。アルに言って準備してもらうわ!」


「はい、私はレオとスミスさんに伝えてきます」


「あの、わし予定があったりするん……いえっ、なんでもないです」


 こうして赤き翼のファストの街へダンダルを護衛? と言う名目の休暇中の旅行が決まった。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

後書き

次ィ回ィ予告ゥ


アメリアVSララ!


「あんた、タツヤのなに?」


「私はご主人様のものです。」


「モノォ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る