ヘイホーとマリア2

「おうアルマ、ゆっくり休めたかい? 遅くなって悪かったな」


「いえ、ゆっくりと休めましたのでありがとうございます。心の準備も必要でしたし」


 マリアが言葉を発した後、少しの間が空いてその間を察してマリアが行動する。

 スルッと衣擦れする音が鳴って、パサリとマリアの上着が落ちる。替えの下着なんてなかったので、ノーブラだ。


「おっおい! なんで脱いでるんだよ⁉︎」


「ご主人様は着たまましたい方なんですか? 知識はありますが初めてなのであまりマニアックな物は避けていただきたいのですが」


「するって何を、あと昼から聞いてるけどご主人様って何?」


「女の口から言わせたいなんて。夜のお世話ですよ。あと、最初にご飯をもらった時に望む事をするって言ったので、私は貴方の所有物です」


 頬を赤らめマリアが言うと、ヘイホーは唖然とした顔をしている。再起動したヘイホーが言葉を発する。


「どっ、どこの世界に飯食わせただけで女を所有物にする奴がいるんだよ! 奴隷みたいになる奴がいるんだよ!」


「ここにいます! 約束は大切ですから」


「じゃ、じゃあその約束は無しだ。俺は昼に宿に行って部屋をとって、水浴びしてくれと頼んだ。それで何でもは終わりだ!」


戸惑って一息に言い切るヘイホーを見て私は何だかおかしくなってしまって、少し笑ってしまった。笑うなんていつぶりだろう?


「その小さなことが無ければ遅かれ早かれ私は死んでいました。その後に貴方は私を捨てるのですか?何でもするので助けてください」


「わかったよ! じゃあまず……服を着てくれ。あとそういうことはしなくていい。店を手伝ってもらう」


 戸惑いながら自分を側に置く事を決めた男に感謝をする。今思えばやけに言葉使いの綺麗すぎる。自分の事は何も話さない娘など厄介ごとの臭いしかしないのに。


「ご主人様ならいいですよ。私も覚悟を決めましたし」


「馬鹿野郎、からかうんじゃねえ! あとご主人様もやめろむず痒い。ヘイホーでいい!」


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……長く話していたことに気付いたのか、マリアが気まずそうに締める。


「そして、この人が世界の料理を見たいと言うので色々な地を回りまして、なんやかんやありまして、ファストの町で宿を開きました」


 ヘイホーが昔を懐かしんだのか、感極まって泣くのを我慢している。


「そして2年前位に、コンマンがどこで聞いたか宿を訪ねてきまして求婚してくるとか、色々あって今に至ります。私の原因不明の病もコンマンが来てからなので、関係性はあるかも知れないと思っています。タツヤ様はどう思われます?」


「……でもいい」


「えっ、今なんておっしゃいました?」


「どうでもいいって言ったの! めちゃくちゃいい物語読んでて途中のページが抜けてる気分だよ。なんやかんやと色々の部分を今すぐ話して!」


 タツヤ様が珍しく取り乱しています。私も興が乗って、長く話しすぎたと思って最後を端折ったのですが。


「あの、それより放火犯が来るのですよね? 対策とか練らないと、私が話しすぎたせいもあるんですが」


「鷹の目、並列思考、並列視野発動。これで宿の周りの警備はOKだから、スキル切れそうになったらポーション飲むから大丈夫。あと、モンとキーは外で隠密使って相手に逃げられないように警備」


「「ヘイ!」」


 一応冷静なのでしょうか、余り今のような感じでは乱れない方なので心配になります。コレお話を続けるんでしょうか?


「いただきますの文化が流れ人からの物だったなんて。……僕がしていてもなんですかそれ? って聞かれないのは何故だ? でもお客様は言ってないよな?ベルドラにもいなかった」


「私達はご主人様が言っていたので真似しました。意味は今のお話で知りました。とても素敵な意味なんですね」


「そうなんだよ。僕もこれを説明したかったよ。ヘイホーのは、タイミングも説明も完璧だ。行動も全部格好いいよ。主人公はお前だったのか?」


 リリがそう答えたのでタツヤ様が悔しそうにしています。こんな幼い一面もあったのですね。異世界あるあるってなんでしょう?まぁ流れ的にやっぱりタツヤ様流れ人ですね。


「すまない取り乱した。じゃあ話を続けてくれ。放火犯が来たら僕も出るから大丈夫だから」


 ルルとララは同じく感極まって泣いています。特にララは「奴隷の様な関係の方と結婚……」とか呟いて顔が惚けています。そんな簡単にありませんよそれ。


 じゃあもう少し詳しく話させていただきましょうか。

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