第3章 プロローグ
お待たせしました。三章開始です。また読んでくれると嬉しいです。
「やっと着いたなー」
既に一度下見で訪れた街『サーズ』
この町に今度は荷物をたっぷり積んだ馬車で俺達はたどり着いた。俺はまた新しい宿、いや!『オールインサーズ店』と言った方が正しいだろう。この街でも最高の宿を作ろう。最高の仲間たちと共に。
ひと月前、オールインファスト店
「みんな、集まったな。それではミーティングを始めよう」
「「「はい」」」
「オールインファスト店は前月よりも客数、単価が上がっている。これは夏祭りの時期で、行商人や隣町からの観光客が増えた為と思われる。スイートルームの定着も要因の一つだろう。それから……僕からの報告は以上だ。何か質問や意見があれば言ってください」
「そっ、それではオールインファスト町2号店の報告にうつらせていただきます。2号店の方は、まだ芳しく無い状況が続いています。簡単な改装、看板の取り替えは終わらせたものの、前の宿の印象が強いようで、徹底した丁寧なサービスを心がけています。そして……私からは以上です」
辿々しいながら、オルテカの報告が終わる。最初は俺が統括でやっていたが、最近になって2号店の支配人をオルテカに任せ始めたのだ。
「うん、大体僕も同じ意見だ。ただ、他の従業員から、全く君の悪いところが出なかったのが気になるんだよね」
「ご主人様、それは何か悪いことなのですか?」
「働いてる人間全員が一つの不満もなく働ける場所を作れたらそれは神様だよ。オルテカ、君に言ったよね。怒らない。注意しないは誰の為にもならないって」
ララは僕に心酔してる部分があるけど、同じ村から同じタイミングで来たルルだって不満があったんだ。
新しくハケン村から来ている子達だって、不満があって当然なのだ。あっ! オルテカの顔から変な汗が出てる。
「すっ、すみません。嫌われたく無いと思ってしまい、ついつい優しくしてしまいました」
「優しく? 甘くだよね。まぁそれ以外の報告は良かったし、今回は大目に見よう。他の2号店の従業員に伝えて。ミスが多いようなら、僕が1週間ほど接客指導に行くとね」
「はいぃぃぃ!!!!」
俺が笑顔でそう言うと、オルテカは背骨が反り返るほどに背筋を伸ばして返事をした。
その後のミーティングは滞りなく進んでいき。最後の締めの挨拶を達也がする時にそれは起こった。
「それでは今日も一日頑張りましょう!……と言いたいところなんだけど、今日は皆さんに重大発表が有ります」
全体ミーティングでは無く幹部ミーティングだったが今までにない事に、会議室はざわついた。そして達也がゆっくりと口を開ける。
「早ければ来月、遅くても再来月を目処にサーズの街に新店舗をオープンします」
「それはファストの町の宿を閉めると言うことですか?もっと大きな場所で、都会で勝負がしたいと?」
「何故セカンズの街を飛ばしていきなりサーズの町へ行くのですか?」
など、質問が飛んでくる。達也はそれをいい傾向だと感じる。何故なら上に怒られたく無いから、疑問や質問を出来なくなるのは1番愚かな事で、成長の見込めない会社だからと昔、本で読んだからだ。本の知識かよ! と、締まらなく思うかも知れないが、達也自身経営は初めてなので仕方の無い事だろう。
「セカンズの街を飛ばすのは、セカンズからはもうファストにお客様が来てくれている。口コミも充分だ。だからファストとサーズで挟んでお客様の知名度を更に上げる。セカンズの街に作る時は、向こうから請われて作る形にしたい。だから勿論ファストも潰さない。その為に大量に従業員を雇っているんだ」
これが達也の考えた出店方法だった。
ファストから王都まで、10の町があり、8番目にベルドラがある。思い入れのあるベルドラには作りたいが、それ以外は一足跳びに作っていくスタイルで、間の町を挟んでいき出店しようとしたのだ。
「今、みんなが気になっているの誰がどの店で働くか? 誰が店を仕切るか? だろう。その為に『人事異動』を行います」
初めて聞く言葉に久しぶりにみんながポカーンとしている。さぁ、始めよう。初めての人事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます