3章 1話 人事異動(前)
「タツヤ様、じんじいどうとはなんですか?」
うーん、久々のララの平仮名読みだな。可愛い。ほんわかする。いや、倫理観倫理観。俺はロリコンじゃないし。
「人事異動とは、例えばララをサーズの街の受付にとか、バインをキッチンからホールにとか、人を動かす事を言います」
「あの、私はサーズへ行くんですか? ハケン村の仕事もしたいので、出来れば残りたいのですが」
「リリ、今回はそう言うのも踏まえて考えているから大丈夫。ただ、個人的理由とかで、残りたいとかは通らない場合もあるからね。彼氏がこの町にいるとか、アプローチ中の女の子がいるとか」
達也がにっこりと笑って言うと、ブンブンと首を縦に振る幹部ミーティングのメンバー。ちなみに今いるのは、ララ・リリ・オルテカ・カイア・マリアと言ったサービスメインな感じだ。ヘイホーやキッチンチームには今、原価率などの数字を勉強させている。
「とりあえず今回はこう言うことがあると言うことで、異動は全体で発表するから。その時にどうしても行けない理由がある人は言いに来てね」
「あの、タツヤ様はもちろんサーズに行くんですよね? その場合俺が今やってる仕事はそのまま続けるんですか?」
オルテカが不安そうに言う。そうそうみんなが知らないことだ人事の難しい話だけじゃ無く、そう言う話もしておかないとな。
「オルテカは僕達がサーズに行くタイミングで正式にオールインの支配人になって貰います。支配人の仕事は今やっている事をそのままやっていけばいいから。あっ! カイアもね」
「えっ、私ですか? だって私は女ですよ! 女の私が一つの宿の長なんておかしいですよ。それに大変なのとか、責任がつくのは嫌だなーなんて。リリの方がいいんじゃないですか?」
そう、残すメンバーで性格的にも向いているのはリリの方だ。ハケン村の仕事がなければ、間違い無くリリだったのだが。僕はカイアの口を塞ぐために、たった一言こう言った。
「給料は最低1.5倍だよ」
「えっ? タツヤ様今なんて?」
「給料は最低でも今の1.5倍にする。それに業績をあげたり他の支店の役立つアイデアを出せば特別報酬も出そう」
「やります! 私に任せてください。オルテカの店なんかずっと閑古鳥を鳴かせてやります!」
調子のいい。でもこれがカイアの良いところでもある。オルテカもライバルとしてカイアを意識してうまく相乗効果が出てくれれば尚良い。
「まぁ、もちろん責任は今の何倍になるかもわからないけどね。あと、一つわからないんだけど、なんで女だと偉くなっちゃダメなの?」
「へ? 責任はそんなに?……あのー私やっぱり」
「女は子供を産み家を守るものなので、男の人より仕事で上に行くことはありません。結婚しない、女を捨てると言って仕事に生きるかたもたまにいますが」
カイアの撤回は遮られる。そしてやはりこの世界でも男女は平等ではなかったか。まぁそれもなんとかするんだけど。
「うちの宿屋は男でも女でも能力があれば仕事をしてもらうよ。勿論本人の意思は尊重するけど。男と女どちらが優れてるわけじゃ無くて、その人次第だから。カイアは補佐にリリ付けてあげるから、頑張ってね。その分の功績もリリと分けてもらうけど」
「まぁ、それなら。ハイ頑張ります!よろしくねリリ。」
「そう言うわけで明日全員の行き先や処遇を張り出すようにするから。今日はこれで終わり。それでは今日も一日お願いします」
達也の締めの言葉でミーティングは終わり、新店舗の発表などに皆少し戸惑いながらも、仕事に戻った。そして翌日、オールインの人事異動とサーズに新店舗を出すと言う公示がされた。
1ヶ月後を目処に、サーズの街に新しいオールインを出す。その際の人間の移動。
[ファストの町→サーズの町に行く人]
タツヤ
ララ
ヘイホー
マリア
他ハケン村から二名
[ファストに残る人]
リリ
ルル
バイン
オルテカ
カイア
マシュー
ハナ
他ハケン村から6名雇用予定
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
タツヤ 改めて、本日よりオールイングルー
プ総支配人とする。
リリ 本日よりハケン村教育責任者及び
オールインファスト町1号店の支配人補
佐とする。
オルテカ 本日よりオールインファスト町支
配人とする。
マリア 本日より、オールイングループ
サービスマナー担当講師とする。
ヘイホー 本日より オールイングループ、
総料理長とする。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
主要メンバーには内示をして承諾をもらっていたが、他のメンバーは大いに沸いた。特に女性が軽視される世界で、リリ、カイア、マリアと言った、3人が要職につくことがハケン村から来ている他の女性にも希望を持たせた。新店舗や昇格人事にざわつく中、何人かから声が上がった。
「「「異議あり!!!」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます