概要
紡ぐ文章は美しく、されど生活能力皆無な締め切り破りの問題児である玄鳥。
手のかかる雇い主の元の面倒見ながら忙しく過ごす日々、ある時あやめは一つの万華鏡を見つける。
持ち主を失ってから色を無くした、何も映さない万華鏡。
その日から、月の美しい夜に玄鳥は物語をあやめに聞かせるようになる。
彩の名を持つ鬼と人との不思議な恋物語、それが語られる度に万華鏡は色を取り戻していき……。
過去と現在とが触れあい絡めとりながら、全ては一つへと収束していく――。
===========以下、公募の為のあらすじなのでネタバレを含みます===========
元令嬢のあやめは、作家・玄鳥の家で女中として働いていた。
玄鳥は
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!日本的な色彩美が詰め込まれた、宝石箱のような世界
まだ読了前ではありますが、レビューを書かせていただきます。
多くの魅力がありますが、大きく世界観と表現の素晴らしい作品です。
・世界観
具体的な内容の記載はあえて避けますが、幻想的な和風ファンタジーです。
物語自体は一種の暗さ、儚さがあるものの、表現の美しさがうまくカバーして、かえって魅力になっています。
純和風ファンタジーに触れたい方にはおすすめできます。
・表現
全体を通して、繊細で技巧的な表現がちりばめられています。
丁寧に紡がれた言葉の数々が詩的で、世界観とマッチしています。
特に色彩や心理の描写に美しさとこだわりを感じます。
その分、著者の方には産みの苦しみがあったのではないか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!色を重ね繋ぐ祈りと愛の物語
色のない万華鏡という美しい描写の物語は作家、玄鳥の元で女中として働くあやめの心情を表すかのように、どこか心許なさを感じながら始まる。
美しい文章で紡がれる物語は時に時代に生きる女性の過酷さを描いている。それでも玄鳥の語る鬼と人の間に紡がれた物語の数々に胸が熱くなる。
これは愛の物語だ。鬼と人が互いに想い合う祈りの物語だ。
色のない万華鏡は語られる度に色を戻し、その度に物語の形が鮮やかに浮かび上がっていく。
いくつもの愛の色を重ねた万華鏡のような物語は読み終えた今も光に透かされた色がきらきらと輝いている。
美しい物語に出会えて良かったと思えるお話です。 - ★★★ Excellent!!!良いんです───!!
皆様、レビューが素敵。分かりやすい……。
よって、内容説明は全部割愛!!
とにかく、ため息が出るほど、うっとりです。
色合いが、金、紅、翠、蒼……、その輝きは、大正のステンドグラス、もしくはギヤマンを通したような、硝子のなんともいえない、美しい煌めきの色合いです。
とにかく作品に、この美しい色が、満ち溢れているのです。
その色が、ゆっくり、きらきらと、水中に落ちていく宝石のような優雅な遅さで、万華鏡のなかを回ります。
もう、うっとりです。
抽象的で申し訳ない!
でも、読めば納得いただけると思います。
話の構成が凝っていて、しかもコンパクトにまとまっていて、どれも、愛…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人と鬼が紡ぐ、色彩豊かなひとつながりの物語
万華鏡という懐かしい言葉に惹かれて読み始めた作品。
自活力のない天才小説家が女中のあやめに語って聞かせる、鬼と人との物語。
その物語が、本当に万華鏡を覗いたときのように、色彩豊かにこの作品を彩ります。
ある時は切なく、ある時は妖しく、ある時は愉しく、ある時は狂おしく。
それがただのお伽話などでなく、ある地点につながるひとつながりのものであると気づいた時の感動は鳥肌ものです。緻密に練られた伏線とそれらの回収の仕方に感嘆します。
物語の最後は、目の奥にチラチラとまだ鮮やかな色が残るような、まさに万華鏡から目を離した時の、ほぅと息をつきたくなる心地。
あなたもどうぞ、覗いてみてください。