色を重ね繋ぐ祈りと愛の物語

色のない万華鏡という美しい描写の物語は作家、玄鳥の元で女中として働くあやめの心情を表すかのように、どこか心許なさを感じながら始まる。
美しい文章で紡がれる物語は時に時代に生きる女性の過酷さを描いている。それでも玄鳥の語る鬼と人の間に紡がれた物語の数々に胸が熱くなる。
これは愛の物語だ。鬼と人が互いに想い合う祈りの物語だ。
色のない万華鏡は語られる度に色を戻し、その度に物語の形が鮮やかに浮かび上がっていく。
いくつもの愛の色を重ねた万華鏡のような物語は読み終えた今も光に透かされた色がきらきらと輝いている。
美しい物語に出会えて良かったと思えるお話です。

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