まだ読了前ではありますが、レビューを書かせていただきます。
多くの魅力がありますが、大きく世界観と表現の素晴らしい作品です。
・世界観
具体的な内容の記載はあえて避けますが、幻想的な和風ファンタジーです。
物語自体は一種の暗さ、儚さがあるものの、表現の美しさがうまくカバーして、かえって魅力になっています。
純和風ファンタジーに触れたい方にはおすすめできます。
・表現
全体を通して、繊細で技巧的な表現がちりばめられています。
丁寧に紡がれた言葉の数々が詩的で、世界観とマッチしています。
特に色彩や心理の描写に美しさとこだわりを感じます。
その分、著者の方には産みの苦しみがあったのではないかと想像します。
和風文学表現に触れたい方にはおすすめできます。
特に世界観、表現に著者の方のセンスを感じますので、丁寧に読み進めるほど、この作品の魅力に胸打たれると思います。
色のない万華鏡という美しい描写の物語は作家、玄鳥の元で女中として働くあやめの心情を表すかのように、どこか心許なさを感じながら始まる。
美しい文章で紡がれる物語は時に時代に生きる女性の過酷さを描いている。それでも玄鳥の語る鬼と人の間に紡がれた物語の数々に胸が熱くなる。
これは愛の物語だ。鬼と人が互いに想い合う祈りの物語だ。
色のない万華鏡は語られる度に色を戻し、その度に物語の形が鮮やかに浮かび上がっていく。
いくつもの愛の色を重ねた万華鏡のような物語は読み終えた今も光に透かされた色がきらきらと輝いている。
美しい物語に出会えて良かったと思えるお話です。
皆様、レビューが素敵。分かりやすい……。
よって、内容説明は全部割愛!!
とにかく、ため息が出るほど、うっとりです。
色合いが、金、紅、翠、蒼……、その輝きは、大正のステンドグラス、もしくはギヤマンを通したような、硝子のなんともいえない、美しい煌めきの色合いです。
とにかく作品に、この美しい色が、満ち溢れているのです。
その色が、ゆっくり、きらきらと、水中に落ちていく宝石のような優雅な遅さで、万華鏡のなかを回ります。
もう、うっとりです。
抽象的で申し訳ない!
でも、読めば納得いただけると思います。
話の構成が凝っていて、しかもコンパクトにまとまっていて、どれも、愛が狂おしいのです……。
どこにも逃したくない、と、男は願い、女は、私を逃さないで、虜にして、と願うのです。
勿論、それだけではないのですが、そんな愛が大好物な方はもう、くらくらするはずです。
そんな愛を沢山見せてもらったあとの、最後の、愛の深きことよ。
愛と、人の情の深さに、最後は心をうたれるのです。
うたれます。読了して私は今、清々しいです。
ぜひ、ぜひ、ご一読をおすすめします!
万華鏡という懐かしい言葉に惹かれて読み始めた作品。
自活力のない天才小説家が女中のあやめに語って聞かせる、鬼と人との物語。
その物語が、本当に万華鏡を覗いたときのように、色彩豊かにこの作品を彩ります。
ある時は切なく、ある時は妖しく、ある時は愉しく、ある時は狂おしく。
それがただのお伽話などでなく、ある地点につながるひとつながりのものであると気づいた時の感動は鳥肌ものです。緻密に練られた伏線とそれらの回収の仕方に感嘆します。
物語の最後は、目の奥にチラチラとまだ鮮やかな色が残るような、まさに万華鏡から目を離した時の、ほぅと息をつきたくなる心地。
あなたもどうぞ、覗いてみてください。
天才作家のもとに女中として住み込むことになった『あやめ』。
彼女が月の晩に、天才作家『玄鳥』から「小説に書く予定のない話」として不思議な鬼の物語を聞かせてもらう今作。
冒頭から続くあやめと玄鳥の物語に、鬼の逸話がオムニバス劇中劇として差しはさまれる構造です。
ひとつひとつ短編として高い完成度を誇る上、秘密や伏線が隠されていて単体でじゅうぶん楽しめるもの。
一方で、現実世界の作家・玄鳥先生が、文豪にいそうなタイプで面白い。
あやめも生まれは良いのに苦労を重ねてきたお嬢様で、応援したくなります。
彼女が繰り返し不思議な夢を見るのも、何か理由がありそう。
現実世界のほうにも「色を失った万華鏡」という不思議なものが出てきます。
ひとつ鬼の物語を聞くごとに、鬼の名にちなんだ色が万華鏡に戻ってくるという仕掛けが、美しくて心躍ります。
全ての色が戻った時、何が起こるのか? あなたも見届けて下さい。
しっとりとしたシリアス調の和風物語や、異種族間の恋愛がお好きな方には特にお勧めの物語です。
舞台はおそらく大正前後の日本、またはそれに近い世界観。作家玄鳥のもとで女中をしているあやめはある日、掃除中に万華鏡を見つけます。覗けば「色」がなく、壊してしまったと慌てるあやめに、玄鳥は言います。これは亡き妻の物で、彼女が亡くなった時からこうなのだと。
その日から玄鳥は、鬼と人に纏わる物語を聞かせてくれるようになるのですが……。
描かれるのはリアルな時代背景と、抑圧されつつも懸命に生きる女性たち。
そして、彼女たちに愛し愛された鬼はそれぞれが個性的で、どの物語にも異なる魅力があります。
もしかしたら、お気に入りの鬼が見つかるかもしれませんね!
万華鏡がうつし出す世界のように美しく儚い物語。
一つ語り終える終えるごとに、万華鏡は色を取り戻していきます。
全ての色が揃った時に何が起こるのか、ぜひ多くの方に見守っていただきたいです!
大正時代を舞台に、それぞれに儘ならない人生を強いられる女性たちが鬼と心を通わせる連作短編集です。金の檻、紅の繭、蒼い薔薇──色を冠した幻想的なモチーフは、彼女たちの苦悩の象徴であり、彼女たちが出会う鬼が纏う色でもあります。彼女たちの人生の中で初めて煌めいた色を集めて万華鏡にしたような物語だと思いました。
家や時代という桎梏に縛られ、人の世で幸せになれない彼女たちが美しい異形によって救われる異類婚姻譚の構造、それ自体も美しく切なく心惹かれますが、本作の見どころはそれだけではありません。色とりどりの物語を追ううちに、それぞれのエピソードが絡み合い、「本筋」に込められた深い想いが浮かび上がることでしょう。鬼が一方的に人を救うのではなく、人との関わりによって、不死と人喰いの業を負った鬼がいかに変わり、いかに救われるのか──タイトル通りの色鮮やかな万華鏡を覗き見るかのような美しく希望溢れる結末を、どうぞ見届けてくださいますように。