〇天才作家が夜な夜な紡ぐ、悲しくも美しい鬼の物語

天才作家のもとに女中として住み込むことになった『あやめ』。
彼女が月の晩に、天才作家『玄鳥』から「小説に書く予定のない話」として不思議な鬼の物語を聞かせてもらう今作。

冒頭から続くあやめと玄鳥の物語に、鬼の逸話がオムニバス劇中劇として差しはさまれる構造です。
ひとつひとつ短編として高い完成度を誇る上、秘密や伏線が隠されていて単体でじゅうぶん楽しめるもの。

一方で、現実世界の作家・玄鳥先生が、文豪にいそうなタイプで面白い。
あやめも生まれは良いのに苦労を重ねてきたお嬢様で、応援したくなります。
彼女が繰り返し不思議な夢を見るのも、何か理由がありそう。

現実世界のほうにも「色を失った万華鏡」という不思議なものが出てきます。
ひとつ鬼の物語を聞くごとに、鬼の名にちなんだ色が万華鏡に戻ってくるという仕掛けが、美しくて心躍ります。
全ての色が戻った時、何が起こるのか? あなたも見届けて下さい。

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