第5話

「…よし、こんなもんだろ」



鏡の前に立ち、ネクタイを締める。



平凡な男子高校生もこうして制服を着れば中々様になっているもので我ながら結構いい男なのでは……




「…………………」



うん、今の無し、はっきり言って自分の容姿とかそんなに頓着は無い、寝癖がついて無くて常識の範囲内の格好が出来ているのであれば特に気にする必要なんてないと思う。



因みに未央音がれーじれーじ呼んでるのは俺の事、風魅かざみ 冷迩れいじ、下の名前を伸ばしてれーじと言う事なんだろう、未央音は人の名前を愛称で呼ぶ傾向にあるので今更呼び方に対して俺がとやかく言うような事はない。



「…未央音もそろそろ準備出来たかな」



一人洗面台の前で呟くと、未央音の家が建っている方向へ視線を向ける、自分の家と未央音の家はお隣同士で手を伸ばせば届くような距離だ、まさに幼なじみに有りがちな展開だが、未央音はそれを利用して先程のように窓から玄関から何度も家に侵入して来る、先程も窓枠に足を掛け、軽快な様子で俺の部屋から自分の部屋に準備をする為戻って行った。




俺達の部屋は一階同士だし、特に危険もないのだが時々音も無く、気付くと隣で漫画本を読んでいるなんて事が多々ある、正直心臓に悪いのでやめて欲しい。



「……呼んだ?」



「…うおっ!?ビビった」



鏡越しに肩から顔をひょこっと顔を出して来た事に驚きつつもすっかり制服を着込んだ未央音がそこに立っていた。



「…れーじ驚きすぎ……可愛い」



ぎゅっ



鏡越しに目線を合わせて来る未央音は先程と同じようにゆっくりと俺を抱き締めて背中に顔を埋めていた。



「そりゃいきなり出て来たら誰だって驚くだろ…」



あと可愛いってお前から言われると恥ずかしさ以上に来るものがあるな。



「…私は……驚いたり…しないよ?」



「それじゃあ怖い番組見た後、もうトイレに着いていかなくても大丈夫そうだな」



たまたま怖い番組を見てしまう時があるのか、そんな時はわざわざ俺の家まで来て、トイレに着いてきて欲しいと言う事がある、そこまで来るならもう自分の家のトイレに行った方が早いと思うけど……まぁ…誤差の範囲か。



「……それは…驚くとは…違う……怖いのは…だめ」



未来みくに着いてきて貰ったらいいんじゃないか?」



未来とは未央音の妹の事、巷でも評判の仲良し姉妹で遊びに来る時など二人揃って来る時も多い。



「駄目……お姉ちゃんとして…情けないとこ……見せられない」



「……それに…」



と、未央音は続ける。



「未来……怖いテレビ見てるとき…爆笑してる事……あるんだよ?」



あぁ、確かに怖い映像特集とかで明らかにこれ作り物だろって映像があると拍子抜けして逆に笑いそうになる事はあるけど……



「……感性……ぶっとんでるとしか…思えない」



可愛い妹の感性を勝手にぶっ飛ばすなよお前は……



「もしかしたら本当は怖いけど笑う事で怖さを紛らわせようとしてるのかもしれないぞ?」



「………もう…怖い話し…やだ」



今怖い話ししてたっけ??

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