第11話
「……すー……すー……んゅ」
「み、未央音ちゃん本気で寝てるね…」
「あぁ、元から未央音は常に結構眠そうにしてるけど最近は特に眠そうなんだよな」
チャイムが鳴り、授業中、居眠りをしながらも隣に座る俺の服の裾をしっかりと掴む未央音を横目で見る。
志乃と一葉は隣のクラスで、未央音の判決によって
因みに今は現国の授業だが今日は担当の教師が不在と言う事で俺達は教室で自習をしている。
「…んー…れーじ……そこ…くすぐったい……だめ…」
「……………………」
おいやめろ夢の中の俺。
「あのさ、一応確認なんだけど二人って付き合ってるんだっけ?」
「なんだよ…いきなり」
「いや、だっていつも一緒だし凄く仲いいじゃん?」
「幼なじみなら普通じゃね?」
「………じゃね」
「「………………」」
「……すー……ん」
寝息を立てながらも絶妙なタイミングで相槌を打って来る未央音に二人の視線が向く。
えっ起きてる?
「普通……じゃないでしょ、周りも結構二人が付き合ってるって思ってる人居ると思うよ」
「…そ、そうか?」
この疑問を俺にぶつけて来る奴は正直な話結構いる。
六炉、一葉だけに限らずクラスメイトからもそう言った内容の事は聞かれるのだが結論から言うと俺達は別に付き合っている訳じゃない。
こうして言われる度に考える、確かに俺と未央音は距離感が近いんだと思う……
「未央音ちゃんと付き合うつもりはないの?」
「…まぁ、こいつとはずっと幼なじみだったしな」
「……冷迩」
「…………………」
未央音は小さい頃から人見知りで引っ込み思案、何かある度に俺の後ろに隠れては俺以外の人とはあまり関わろうとはしなかった。
そんな未央音を放っておく事が出来なくて小さい時は何かと未央音の世話を焼いていた記憶がある。
その時間の中で俺達は幼なじみ同士としてお互いに支え合える関係を築いて来た。
抱き付いて来る未央音が居たり、布団に潜り込んでくる未央音が居たり、そんな日々は俺もなんだかんだで楽しくてもう自分にとっても当たり前の日常で……
でもそんな関係で居られるのは『幼なじみ』と言う枠組みがあるからなんだと思う……
その枠組みがもし変わってしまったら……俺達の築いて来た日常はどう変化してしまうんだろうか……
そう思うと、何処か寂しさを感じるような気がして…
「……今の関係を壊したくないって……そんな感じ?」
「……だな」
六炉の問いかけに冷迩は複雑そうな表情で苦笑いを浮かべていた。
「……はぁ…馬鹿だねぇ…」
頬杖を付き、六炉は小声で呟いた。
「ん?なんか言ったか?」
「…ん?いや、なんでもないよ♪」
「ってかそう言うお前こそ、一葉とどうなんだよ?」
「ん?いや……俺は…」
ピロン
タイミングを見計らったように六炉のスマホが鳴った。
「おぉ、丁度一葉からメッセージが……」
今授業中なんだが…
『未央が眠っている気配がするのですが、もし寝ていたら寝顔を撮って頂いてもよろしいですの?成功報酬は後でお支払いしますので命に変えても激写して下さい、頼みましたわよ?』
「うん……一葉はほら…未央音ちゃんに夢中みたいだから…」
「な、なんか悪い」
どんなメッセージが送られて来たのかは分からないが遠い目で天を仰ぐ六炉の表情を見て、下らない内容なんだろうなと言うのは察しがついた。
「ま、でも…その内なんとかしないとなー、みたいな事は思ってるよ……いつまでもこのままじゃいれないって言うのは、なんとなく分かってるからさ」
「…………そうか…」
スマホを片手にそんな事を呟く六炉を見て、自分の心に小さなトゲがチクリと刺さったような気がした。
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