第12話

「……れーじ……はい」



昼休みになると未央音から弁当の包みを手渡された。



「あれ?今日は俺の布団に潜ってたみたいだからてっきり作ってる余裕ないと思ってたんだけど」



「…?……潜り込む前に…作ったよ?」



「良く弁当作った後にまた寝ようと思ったな…」



「……照れる」



「誰も誉めてはないけど……いつもありがとな?未央音」



「…ん……頑張って作ったから……頭…撫でた方がいいと思う」



「はいよ」



ポンポン



「………んー……くるしゅー…ない」



差し出された未央音の頭に手を置くと、未央音は目を細め気持ち良さそうに唸っていた。



「…いーなー、未央音ちゃんの手作りいーなー」



それを見ていた六炉は菓子パン片手にその光景を羨ましそうに見ていた。



「…ろっくーの分も……あるよ?」



「マジで!?俺如きに!?未央音ちゃんが!?」



如きて…自分を卑下し過ぎだろ、悲しくなって来るわ…



「…ん……はい」



すると未央音は何を思ったのか六炉が差し出した両手の上に割り箸を置いた。



「えっと……未央音ちゃん?これは?」



「…割り箸」



「う、うん、そうだね、割り箸だね…」



「「………………」」



割り箸を間に硬直する二人。



「…………………」



これ何の時間?




「…ろっくー?」



「…えっ?何?未央音ちゃん!」



「…食べないの??」



冗談がきつくないか未央音さんよ。



「…う、うまいっ!未央音ちゃんがくれる割り箸は美味いなぁっ!!」



ミシミシバリィッ



「…ブフッ」



馬鹿かよ!!



大きな音を立て、割り箸に齧りつく六炉を見た冷迩は思わず吹き出していた。



「勢いだけで生きて行けると思うなよお前は…友達が割り箸バリバリ食ってる所見せられる俺の気持ちにもなってみろ」



「手作りのお弁当が食べたいって言ったのに割り箸食わされてる俺の気持ちにもなってくれない!?」



六炉のツッコミをスルーしつつ、弁当箱を開けるといつものように彩り豊かなおかずが俺を見上げていた。



「……今日も美味そうだな、頂きます」



数あるおかずの中から卵焼きを選び、口に運ぶ……柔らかくて程よい甘さが口の中に優しく広がる……



その味は正に俺がほぼ毎日食べていると言っても過言じゃない、未央音の作った卵焼きの味だった。



「…れーじ……おいし?」



「あぁ、滅茶苦茶美味い」



ぎゅっ



「……良かった」



「……俺居る事忘れられてる?もしかして」



二人のやり取りを目の前で見ていた六炉は味気なさそうに一人菓子パンを齧っていた。



「未央ー、来ましたわよー」



すると、そんな六炉に救いの手を差し伸ばさんと言わんばかりのタイミングで一葉が弁当箱を持って現れた。



「一葉!いらっしゃい!ほら!俺の隣空いてるよ!」



「あら、六炉居ましたの?」



「俺ってもしかして影薄い?」



「…ひぃ……いらっしゃい……あーん」



「…あーん」



すかさず未央音が卵焼きを箸で掴んで一葉に差し出すと、一葉は髪を耳に掛け、目を閉じて卵焼きを口に入れた。



「……んー!流石未央、今日も美味しいですわね」



「……とやぁ」



うん、分かる…未央音にはドヤ顔ではなく、なんとなく少し力の抜けた『とや顔』位が丁度いいような気がする(?)



「変態くノ一はどうした?」



「変態くノ一って……直球ですわね、志乃なら煩悩を祓うとかで山籠りに修行に出掛けて行きましたわよ?」



学校あんのに何普通に修行行ってんだよ!自分の生きたいように生きすぎだろ、道徳かなぐり捨ててんのかあいつは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る