第10話

「…かはっ……未央音殿が……嫌いって……私の事…嫌いって……!!」



「……もう死ぬしか……ありませんわ…」



ざまぁ!!



正直俺は何時もの事だし余り気にしてないがこいつらは些か未央音へのスキンシップが激しすぎるのでフォローを入れるタイミングを伺う事にする。



「………………」



未央音も俺の背後から様子を伺っているみたいだが、未央音は優し過ぎるからどうせ言い過ぎたとでも思ってるんだろうか。



「……あれ、いつの間にこんな事になってんの?」



弄られキャラとして、耐久力はあるものの流石にあれだけ派手に吹っ飛ばされて回復に時間が掛かったのか状況を読み込めていない六炉が俺の隣に立った。



「すみません……冷迩さん、未央……軽い悪ふざけのつもりで………もう冷迩さんを苛めたりしませんわ」



未央音の言葉が余程堪えたのか一葉は俯きがちにそう言った。



「………れーじ…?」



それを見た未央音は脇下辺りから顔を覗かせ、上目遣いで俺を見上げていた。



「…反省してるみたいだしいいんじゃないか?」




ぎゅっ




「……ひぃ……嫌いって言って……ごめんね?」



「……!!…未央!!」



未央音はコクリと小さく頷くとしゅんとした一葉を優しく抱き締めている様子だった。



何この光景微笑ましい。




「…ひぃ……今日も…学校終わったら……電話………いい?」



「……未央……またあの話しですの?」



「………うん」



「えぇ、分かりましたわ……帰ったらすぐに出れるようにしておきますわね?」



「……未央音?」



「……ん」



ぎゅっ



小声で一葉と話していたであろう未央音に呼び掛けると再び俺の腹部に手を回して抱き付いた。



「何か話してたのか?」



「…ううん……なんでも…ないよ?」



「…そっか……」



それで……



「……うぅ……未央音殿ぉ…」



後問題なのはこいつを許すかどうかだが……



「しぃ…何か申し開き……ある?」



「……うぅ……私はただ純粋に……未央音殿とえっちがしたかっただけなのでござる」



「不純だろ!!」



「志乃っち何言ってんの!?」



すかさず俺と六炉の叱咤に近いツッコミが飛ぶ。



どうやらこのくノ一は反省も自身の抑制も足りて居ないらしい。



「……しぃ……一週間……ハグ…禁止」



「……!!?……うぅ、未央音殿との……すけべライフがぁ………」



「…ウケるー」



ちょっと調子に乗りすぎてるのでこの無様な様子を写真に残しておこう。



「か、勝手に撮るんじゃねぇでこざるよ!!」



スコンッ



「何で俺!?」



俺に向かって飛んでくる筈の手裏剣は唐突に軌道を変え、六炉の額のど真ん中に綺麗に直撃した。



「…全く、どうして貴方はいつもこう厄介事に巻き込まれるんですの!?」



「俺が聞きたいんだけど」



一葉は仕方ないと言わんばかりに六炉の額に刺さっている

手裏剣を掴んだ。



「ちょっ、抜くならゆっくり!ゆっくりやって!!」



「…歯を食いしばっていれば一瞬……ですわっ!!」



ズボッ



「いや食いしばる意味っ!!?」



「…………………」



勢いで呼吸してんのかコイツら。



「はぁ……騒がしい奴らだな」



「…でも……れーじ…楽しそう」



「はは、そうかもな…」



ポン



掌を未央音の頭の上に乗せると未央音はくすぐったそうに片目を閉じていた。

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