第9話

「……冷迩殿…」



「…冷迩さん…」



本来なら志乃だけの誤解を解けば解決だった筈なのに未央音の爆弾発言に一葉も顔をひきつらせている。



ぎゅっ



「…大丈夫……私が…いるよ?」



俺より先に取り返しがつかないと判断するのやめてくれる?



「…俺もいるぜ冷迩……太もも最高だよな」



「寝てろお前は」



「フォローしてるのに!?」



フォローじゃないんだよな、巻き込み事故なんだよ。



さて、確かに一般の女子生徒が今の話しを聞いてドン引きするならまだ俺も理解はできる、突然一人の男子生徒の生々しい性癖を聞かされたらそれはさぞ身の毛もよだつ事だろう。



でも、なんだろう……



「あ、あまりジロジロ見ないで下さる?」




「…太ももが穢れるでござるよ」



こいつらにそう思われるのも、言われるのも気に入らない。



お菓子をエサに盗撮まがいの事を息をするようにやってのける一葉……



いや、実際一葉は未央音にちょくちょく写真を撮らせて欲しいと言って撮影会等を開いていたりするからこの際まだ目を瞑ってもいいとしよう。



「……ところで未央音殿、ニーソの間に指を入れさせて貰ってもいいでござるか?」



「……?……それ…何か意味あるの?」



「…私の心が満たされるでござるよ」



そう、問題なのは同性なのをいい事にやりたい放題やっているライン越え変態クソくノ一だ。



何故この俺様(?)が朝、出会い頭に同級生を鼻から力一杯吸引しようとするド級の変態にあんな汚物を見るような目で見られないといけないのか。



「ちょっと待ちなさい志乃!」



「な、なんでござるか!!」



「………ひぃ……どうしたの…?」



「私もそれちょっとやりたいですわ」



こいつら泣。



人の振り見て我が振り直せとはきっとこの二人の為にある言葉なんだろうな。



「…二人とも……くすぐった…い…よ」



「……えへへ、すぐ終わるでござるよぉ」



「…………………」



パシャパシャ



そろそろ助け舟出そうか。



「おい、その辺にしとけよ、かなりやばい絵面になってるぞ」



「そんな事ないでござるよ!段々!!段々気持ち良くなって来るでござるよ!!」



平気でライン越えて来んなよ本当に!!



「…後少しだけやらせて下さる?」



「………だめっ」



ぎゅっ



くすぐったさにもいよいよ限界が来たのか未央音は俺の背後に素早く回り込み、そのまま背中に抱き付いて来た。



「……二人共……やりすぎ…れーじ…いじめるのも…だめ」



「み、未央音殿…」



「い、いじめてなんて……」



「……れーじ…いじめる人……嫌い」



柔らかそうな頬袋を膨らませムッとした表情を二人に見せると遂にはそっぽ向いてしまった。

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