………ん…
第41話
『…………………』
『…………………』
ぼんやりと狭い視界の中にお互いに背中を向けて座る二人の小さな影。
俺は二人影の丁度真ん中に位置するような場所に立ち、離れた所からそんな二人を見ているような感覚だった。
段々と二人の影が鮮明になって来る。
一人は小学生位の男の子で何やら拗ねているような、ふてくされているような顔をしていて、もう一人は男の子と少し離れた所で背中合わせに座っている、男の子と同じ年齢くらいの女の子だった。
女の子は体育座りで自分膝を思い切り抱いていて、その瞳には涙が溜まっているようだった。
『……………!』
そんな女の子が心配で手を伸ばし、声を掛けようとしたが、自分の口からは何故か言葉が出て来なかった。
それならせめてと、女の子に歩み寄ろうとするが、何故か自分が女の子に向かって歩いて行く度その距離はどんどん離れて行くような気がした……
何故だろう……声を掛けないといけないと思った……傍に居ないといけないと思った…
たまらず走り出し、大声で叫ぶ……
『……!……!!』
しかし声が自分の口から出て来る事はなく……その女の子からは遠ざかっていく一方だった。
遠ざかって行く程に、自分の視界もどんどん狭くなって行く……
その視界の中で俺が最後に目にしたのは……男の子がふてくされた表情のまま立ち上がった姿だった。
◇ ◇ ◇
「………………」
目を開けるとそこには見慣れた自分の部屋の天井が広がっていた。
何だか懐かしい夢を見た気がする……
先程朧気に見た夢の中に居た二人は幼い頃の俺と未央音……
夢だけど実際にあった出来事で…あれは俺達が初めて喧嘩をした時の事だった。
普段仲がいいだの付き合ってるんじゃないかと噂されている俺達だが、それじゃあ今まで一度も喧嘩をして来なかったのかと言われればそれは違う。
むしろ未央音とは結構些細な事で喧嘩をして来たと思う。
昔の未央音は今よりずっと無口で自分の気持ちを表現するのも上手じゃなかった……
だから一番最初に喧嘩した時は仲直りするのに大分時間が掛かってしまった記憶がある……
あの時の事は今でも鮮明に覚えている、俺は確かあの時……
コンコン
昔の記憶に想いを馳せていると控えめな小さなノックの音が部屋の中に響いた。
「……れーじ…起きた?」
部屋の扉を開けたのはYシャツにリボン、スカートとエプロンと既に学校の準備が整っている様子の未央音だった。
「あぁ、おはよう未央音」
ぎゅっ
「…おはよ…れーじ……朝ご飯…出来てるよ?」
「分かった……準備したら直ぐに行くよ」
「ん……待ってるね?」
小さく頷いた未央音は小さく手を振ると、部屋の中から出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます