第42話
準備を済ませ、リビングに行くと未央音は台所に立って菜箸を片手に朝から忙しそうに動いているようだった。
リビングのテーブルに用意された朝食には温かそうな湯気が上がり、窓から差す日の光が美味しそうな朝食を照らしていた。
「何か手伝おうか?」
「……ううん…大丈夫…もう…終わったよ?」
未央音は菜箸を置き、弁当箱を馴れた手つきで包むと、リビングのテーブルの上に二つの弁当箱を並べて置いた。
「……ふぁ……食べよ?」
まだ眠いのか、小さい欠伸を一つするとエプロンを椅子に掛け、そのまま座った。
「……あぁ」
朝から俺と未来、自分の弁当と朝食の準備、眠そうなのも無理はない、そもそも未央音は朝が苦手なのに……
「今日は布団に潜り込んで来なかったんだな」
「……ん?……寂しかった?」
「だ、誰もそんな事言ってないだろ!!」
「……今日…未来…少し寝坊して……バタバタしてたから……ごめんね…?」
何か俺がわがまま言ってるみたいになってるし。
「……あ…そうだ…今日れーじのお母さん……夜…居ないって?」
「ん?あぁ、聞いたのか?少し仕事で遅くなるみたいだな」
「それじゃあ……今日…一緒に晩御飯…食べる?」
「…いや、いいよ一日位なら適当に済ませるから」
未央音の両親は今、仕事の関係で海外に居る……未央音の父親は大企業の社長さんで実は未央音と未来はそこそこのお嬢様だったりするのだ。
未央音が小さい頃から仕事が忙しいらしく、幼なじみの俺ですら滅多に二人の両親に会った事はない。
二人が小さい時は専属のハウスキーパーが二人の身の回りの世話をしていたが中学に入った辺りからは未央音が家事をこなすようになり仕事に忙しい両親に変わって今は未央音が自分の家の家事を回している。
未央音が俺の弁当を作ってくれるようになったのもその頃からで、同じ高校生なのに今ではそつなく全てをこなすその姿には頭が下がる。
「未来は料理は上達したか?」
「……どう…かな?……この間は電子レンジで……核融合…起こしそうに……なってた…みたいだけど…」
「………………」
なんと言うか…言葉を……失うよね……うん。
家電一つで核融合って起こせるのか……世界のエネルギー問題が一気に解決しそうだな。
まぁ、未来はがんばり屋で努力家ではあるんだけど、その努力が奮わない事もあって……でも、そうだよな、誰にだって得意不得意があるもんな。
「……話し…逸れたけど……今日もし良かったら…夜……一緒に」
「いや、そこまで甘える訳には行かないだろ」
「……?……どうして?」
「どうしてもだ、大丈夫だよ一日位」
「…駄目……れーじ…ほっておくと……カップラーメンばっかり食べるし…」
「い、いいだろ別にたまにはカップラーメンで済ませたって……」
「……身体に…悪いから……駄目」
「一日位大丈夫だろ」
「駄目ったら……駄目っ…」
普段は自他共に認める仲良しなのに時々こんな風にお互いの意地がぶつかり合う事があって……
懐かしい夢を見たせいなんだろうか……
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