第34話

「……れーじ……手…震えちゃう」



「頑張れ未央音……もう少しだぞ」



「遊びのレパートリー豊富だねぇ」



一葉のアドバイスを受けた後、俺達は休み時間に机の上でジェンガをしていた。



「……あっ」



未央音の口から小さな声が出ると同時にバランスを崩したジェンガは机の上で音を立てて崩れた。



「……むむ、負けた」



「あはは、罰ゲームだな?六炉」



「何で俺!?」



「今からお前の生爪を剥がす」



「何で今日そんなに執拗に俺の爪を剥がそうとすんの!?流行ってんの!?」



「流行ってる」



「んな訳ないでしょ!!馬鹿かと思われてんのか俺は!!」



「思ってる」



「クソかよ!!」



六炉の渾身のツッコミが炸裂すると共に、六炉のスマホが音を奏でた。



「……っとと、悪いメッセージ来た」



「………ひぃ…かな?」



「さて、どうだろうな」



スマホをポケットから取り出す六炉を見て、未央音が小さな声で耳打ちして来た。



「…………………」



スマホの画面を確認するなり、六炉の口角が分かりやすく上がって行くのが分かる……



「全く、最初から素直にそう言えばいいのにさ……」



こうして良く二人を観察していると、なんだかんだで六炉と一葉は似た者同士なんだと思う、素直になれない一葉と、素直になったらなったで茶化さずにはいられない六炉……六炉にとって茶化すと言う行為もまた素直になれない事の裏返しなんだと思う。



同じ幼なじみでも、俺達と六炉と一葉ではこんなにも違う、性格や相性の問題も勿論あるとは思うけど、俺達がそうであるように、六炉達にも出来れば仲良くしていて欲しい、こんな事を二人に言ったら余計なお世話だと言われてしまうかもしれないけど。



「六炉はどんな写真を撮るのか決まったのか?」



メッセージの相手に大方の予想を付け、改めて六炉に聞いてみた。



「うん、今決まったよ、まぁコンテストに応募させてもらえるかは分からないけどね」



「いい写真……撮れると…いいね?」



「うん、そう言えば二人はもう何を撮るのか決まったの?」



「全く……下らない質問だな」



「……愚問」



「え?それじゃあもう……」



「まだ決まってない!!」



「……とやぁ」



六炉の目の前には戦隊ヒーローも顔負けする程、完璧にポーズを取る二人の姿が写し出されていた。



「よ、よくもまぁ、そんなに自信満々に……あ!そう言えばさっき言ってたURS二人にもメッセージに送っておいたよ?もうクラスメイトの写真も結構投稿されてるみたいだし、イメージが沸きにくいなら覗いてみたら?参考になるかもよ?」



「早いな」



クラス内でも結構写真撮ってる奴居たし、生徒新聞は中々人気があるんだろうか?



「まぁ、こんだけ写真が投稿されてたら一枚位参考になる写真もあるだろ……家に帰ったら一緒に見てみようか?」



「……ん」



「それじゃあ俺はちょっと外すから、面白い写真期待してるよ?二人共♪」



ガッ



「OH!」



「だせぇな!!」



何処に行くのかはあらかた予想はつくが……六炉は上機嫌気味に手を振るとさりげなく足の小指でも机にぶつけたのか、最後に笑いを残して行くと言う格の違いを見せつけ、教室から出て行った。

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