第35話
「未央音?写真どうするんだ?締め切りまでもう時間ないぞ?」
「……んー…」
放課後の夕陽の指す教室に残っていたのは俺達二人だけだった。
夕陽に照される未央音の横顔が何処か憂いているように見える、まるで美しい絵画でも見ているような気分だ、ここで写真を撮れば間違いなくコンテストで一位を取れると断言できてしまえる程に……
「……お腹…すいた」
「…はは、せっかくの綺麗な景色も形無しだな」
あれから六炉や一葉の話しを聞いたり既に掲載されている写真を参考に度々写真を撮っていたがどうも未央音の御目がねに叶う写真は撮れていないらしく、そうこうしている内にコンテストの締め切は前日まで迫っていた。
未央音はと言うと現在椅子の上で色んなポーズを取ってはスマホをあらゆる方向に傾げていた。
一葉が言っていた楽しい思い出を残す為に楽しんで写真を撮ると言う事、そのアドバイスは中々説得力のあるものだと思ったし、何ならそれは今直ぐにでも達成出来る、または既に出来ていると思う。
しかし未央音は、いつものように写真を撮るだけでは駄目だと言っていた。
じゃあどのようにして撮れば未央音の満足した写真が撮れるのか?
それを未央音に聞いてみたがそれを口で表現するのは難しいのか未央音は何処か口ごもっているような、歯切れの悪い反応を見せていた。
「未央音?あんまり椅子の上で変なポーズ取ってると危ないぞ?」
「……ん、大丈夫…」
「そ、そうか?」
時々少しだけアクロバティックと見受けられるようなポーズが混じっているから少し心配になる、未央音は言動からも、もしもの時素早く動けるタイプじゃないし。
「…なぁ?いつもと違う写真が撮りたいって言ってたけど……どうしていつもと同じ写真じゃ駄目なんだ?」
「……………………」
すると突然その言葉を聞いた途端、未央音の動きがピタッと止まった。
「……だって……決めた…から……決心……した…から」
未央音は自分の胸の前に両手を持ってくるときゅっと手を握り込んでいた。
「………ーじ…が……応援して…くれたから…」
「……未央音?」
段々音量の下がって行く未央音の声をいまいちうまく聞き取る事が出来ない…
「……でも……勇気が……出なくて…」
「……勇気?……どうしてそんな…」
「……応援してくれた…のに……勇気が出なく……」
ズルッ
「……えっ?」
刹那、机に置こうとしていた未央音の手が滑り、もともと不安定な座り方をしていて体制を崩した未央音は頭から地面に向かって倒れ込もうとしていた。
「……!!……未央音っ!!?」
その瞬間頭から爪先に掛けて電撃の様に悪寒が身体を駆け巡り、気付くと何を差し置いても未央音を守る為に身体が動いていた。
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