第36話
ドサッ
パシャッ
「……ぐっ……痛っっってぇ」
庇った後の事を何も考えず飛び出した俺は両腕で未央音を包み込むようにして地面に倒れ込むとまともに後頭部を地面にぶつけ、瞳を閉じていた筈の暗闇の視界に一緒星が散ったように明るくなった。
「……うぐ……おぉ……未央音?…大丈…!!…」
刹那くらくらしているにも関わらず頬に伝わる、経験した事がないような柔らかい感触……
ゆっくりと目を開けると……未央音の頭が自分の直ぐ隣にある事が分かった。
「………………」
……この……感触は…
「………ん……れーじ…!……大丈夫?……ごめんね?……ごめんね?」
冷迩が庇ったおかげで無事だったのか、未央音は直ぐに身体を起こすと目尻に涙を溜めながら冷迩の後頭部を優しく撫でていた。
「……あ、あぁ……大丈夫だよ、それより未央音は?」
「…れーじが……庇ってくれた…から……大丈夫…」
「あはは、未央音が無事で良かったよ」
「……もう……無茶しちゃ…駄目……ばか」
ぎゅっ
自分の頭を撫でる手に重ねるように後頭部に手を当てると、未央音は安堵したような表情を浮かべ、冷迩の胸に顔を埋めた。
「仕方ないだろ?未央音が危ないって思ったら勝手に身体が動いてたんだよ」
「……うん…れーじ……ごめんね?……庇ってくれて……ありがと」
「……あぁ…大丈夫だよ、俺の方こそ心配掛けてごめんな?」
「…れーじは庇ってくれたんだから……謝らなくていい」
その言葉に不満を抱いたのか、未央音は腕の中で頬を膨らませていた。
「……あはは……そっか……!?」
その様子に思わず笑っていると、未央音の手に握られているスマホの画面が自分の視界に写っていた。
「……………………」
その写真を見て、先程頬に触れた柔らかいものの正体が明らかになる。
「………れーじ?……」
俺が黙り込んだ事を不自然に思ったのか未央音は顔を上げ、俺の顔を見ると、無言でその視線を追った。
「どうした…の?…………っっ!!?」
そこには写し出されていた……
未央音が俺の頬にキスをしている……端から見れば間違いなくそう見えてしまうであろう写真が……
「………こ……れ」
スマホを片手に、それでもその写真から視線を離さない未央音の表情がみるみる真っ赤に染まって行った。
「…ご…ごめんね?……れーじ…ごめんね…!」
その写真を完全に認識した未央音は素早く背を見せ謝ってた。
「い、いや、俺が何にも考えないで飛び出したのも悪かったし……その……ごめん!」
お互いに謝って背を向ける……
「……………………」
「……………………」
いや、未央音は悪くない、本当に……何にも考えてなかった俺が悪いだろ!!……未央音だってなんか責任感じてるみたいだし……何とか声掛けないとこの状態がずっと続くのは気まず過ぎる……
「……………………」
何とか言葉を絞り出そうとするが、頭を打った事、未央音に事故とはいえ頬にキスをされた事……
この一瞬で色々な事が起きすぎたせいで頭が状況に着いていけてない。
特に後者の事が自分の混乱を加速させている気がする、頭の痛みを忘れさせる位に……
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