第4話

彼女を起こす為に暫く奮闘していると観念したのか漸く目を覚ました。



「お騒がせ…しました」



彼女なりの謝罪のつもりなのかも知れないが俺の布団をしっかり肩まで掛けている彼女の謝罪には些か誠意が足りていないような気がした。



「……起こしに来たつもり……だったけど…れーじが……気持ち良さそうに寝てたの……見てたら……ごめんね?」



その言葉を、仕草を見聞きして、気持ちのいい程綺麗にトスっと自分のハートに弓矢が刺さったような気がした。



「こ、こほん、いや……俺は別にいいんだけど、その、未央音は女の子だろ?……あんまり男の布団に潜り込んで来るのは……」



「……その話し…何回目だっけ?」



朝、彼女が俺の布団に潜り込んで来る度、確かにこういう話し合いをしている気がするが正直10回目からは数えていない。



「つまり改善する気はさらさらないと?」



「…無論」



その言葉と共に、彼女は俺の布団を捲ってその上にぺたんと座り込んだ。



その瞬間、部屋の中に彼女の甘い香りがふわっと広がる。



オフショルダーニットから覗く肩と太ももの素肌がとても眩しい、彼女は何ら気にする様子はないものの、そんな無防備な姿を見せられると、何だか俺の方が罪悪感に見舞われるような感覚に陥る。



俺の布団を手繰り寄せ、マントの様に布団を羽織っている彼女は俺の幼なじみ、名前は恋氷路れんひょうじ 未央音みおね



身長は150cm程で小柄、俺なんかが抱き締めようものなら折れてしまいそうな程華奢な身体つきだが太ももはハリがあり、程よい肉付き。



肩に掛かる位のセミロングの黒い髪、毛先は顔を中心に中央に少しだけ寄っている、顔立ちは同年代に比べると少し幼く見えるが、濡れて艶のある唇、長い睫毛がその幼さを補完するかのように女の子の魅力を引き立たせていた。



美人と言うよりは可愛いと言う言葉が未央音には良く似合っている、というよりむしろ可愛いと言う言葉は未央音の為にあると言っても過言じゃない。



ぎゅっ



「……れーじ?」



俺の腹部に腕を回して抱き付いて上目遣いで見上げて来る。



未央音の可愛さは外見だけにあらず、この仕草や言動も魅力の一つだ……



今丁度ハグをされているが未央音の仕草の代表と言ってもいいかもしれない。



昔からずっと事ある毎に抱き付かれているので今更ツッコむ気にもならないし、今となっては未央音のハグを心地いいとすら思ってしまう自分がいる。



「……ん?どうした?……ってか未央音…お前…下は?」



布団の上に座る未央音が着ているニットの下にある筈のズボンかスカートの生地が見えない事に違和感を覚えた。



「………あ」



俺に言われるがまま視線を落とすと小さく呟いた。



「…………………」



「…………………」



「……てへっ」



「うおぉい!?まさか何も履いてないのか!?」



「…ぱんつは……履いてる…よ?」



「ちょおぉっ!?見せなくていい!!見せなくていいから」



ニットを下から捲りあげようとする未央音から素早く視線を外す。



俺の邪な心を悪戯に暴走させようとするのは少し勘弁して頂きたい。



「そ、それより早く準備するぞ!!今日も学校あるんだから」



「……らじゃ」



力の入っていないような無気力気味の表情で親指を立てる、恐らく睡眠が足りていないんだとは思うが、無情にも始業の時間は刻一刻と迫っていた。

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