可憐な小動物
衣織
甘えん坊でクールにデレデレる幼なじみ
第1話
「……ん?……眠い…なんだ?」
いつもはアラームが鳴ってから起きる筈の朝、今日自分を眠りから覚ましたのはスマホのアラームではなく『違和感』だった。
「……………………」
寝起き特有の覚醒しきっていない脳がとにかく部屋の中を見渡す様にと指令を送る。
「……ん?……ん?」
そんな指令に起きたばかりの自分の頭が付いて行ける訳もなく、自分はただ寝ぼけ
「………眠…」
口を開けば明らかに寝起きと言った声が自分の耳に届く、我ながら寝起きは間抜けな声できっと表情もそれに比例した事態になっているに違いない。
しかし、自分の頭は思わぬ形で覚醒する事になる。
「………んっ」
「…!!?」
沈黙する部屋の中に明らかに聞き慣れた自分の声とは違う声が
「…………………」
左腕の二の腕に何かが乗っている感覚と、右手の平に何かが触れている感覚がする……
どちらも布団を首まで掛けている為、この違和感を確認する為には一度布団を捲る必要がある。
「……………………」
と、此処で暫く膠着。
長年の経験と勘が今置かれているこの状況を推理して自分に今何が起きているのか仮説を立てる。
先ほど聞こえた自分の物とは思えないその声、左腕の二の腕に何かが乗っているような感覚、そしてすべすべでまるでゆで玉子を撫でているような右手の幸福感。
恐らく居るのだろう、『彼女』が……この布団の中に。
「……………………」
冷静になって布団を見ると、明らかに自分のものではないその膨らみが確かにあった。
「……………………」
両手が塞がれている為ゆっくりと足で布団を退かして行くと……
「……すー…すー」
黒い艶のある髪の毛が自分の二の腕の根本に乗っかっていた。
「……はぁ…いつ侵入してるんだよこいつは」
正体が分かった事で漸く口から安堵の声が漏れる、左腕の違和感の正体はどうやら布団に潜り込んで来たこの小さな侵入者に腕を枕にされていたかららしい。
となれば後解き明かすのは右手に伝わる暖かくて、さわり心地のいい物の正体だけになる…
先程と同じように足で布団をゆっくりと下へ下へと動かして行く。
「…………!?」
しかし『それ』を見た途端、布団を退かそうとする自分の足が電池が切れた時計のようにピタッと停止したのが分かった。
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