第6話

「…それじゃあそろそろ行くとするか」



季節は春、朝はまだ肌寒い時もあるが、花もちらほらと咲き始め大分過ごしやすい季節になって来た。



「……ふぁ」



朝食を終え、玄関の戸締まりをした後、朝から幼なじみとは言え、男の布団に忍び混んで来た未央音は隣で呑気に欠伸をしていた。




基本いつも眠そうにしている未央音だが、今日はいつもより眠そうにしている気がする。



「なんか眠そうだな」



「……れーじの…せい……れーじがあったか過ぎるから…」




どちらかと言うと俺は未央音の体温の方がずっと高いと思うけど、どうやら体温が高い事にお互いに好感を持てるのは共通しているらしい。



「俺のせいなの?それじゃあ今度からはしっかり戸締まりして寝ないとな」



「……え?……安い鍵に…してね?」



破壊する気満々っすね。



「…後……出来れば甘い…鍵がいい……じゅる」



幼なじみが甘い鍵とか言うとんでもワードを飛び出させながら舌舐めずりをしている事に動揺を隠せない。



「はぁ、そんなに侵入して来る気があるなら最初から泊まって行けばいいだろ」



「…駄目……れーじは紳士ぶるから…泊まりに行くと…一緒の布団で……寝れないから…」



紳士ぶるとはなんだ、紳士なんだよ俺は(?)



「当たり前だろ、子供の時はともかく、俺も未央音も成長してるんだぞ?」



「…本当に?……」



上目遣いで見上げながら自分の胸に手を置く未央音、俺の目測だと多分Cカッ……げふんげふん。




「……あぁ…だから…」



「でも………れーじ…太もも派……だからあんまり…意味ないかも?」



「……………………」



「……………………」



「お前……それ絶対学校とかで言うなよ?」



「……分かった……脇の方が好きって…誤魔化しておく…ね?」



「あ、あぁ、どうせ誤魔化すなら誤魔化す前より大きいダメージを食らわない誤魔化し方にして貰えるとありがたいんだけどな」



「……ん…気が向いたら」



「おい、お前の一言で俺の輝かしい高校生活が地に落ちるかもしれないんだぞ」



「…大丈夫……私が…一緒に居て……あげるね?」



ボケて言ってるのか優しさで言ってくれているのか良く分からない表情で未央音は俺の顔を覗き込んでいた。



「あ、ありがとな」



「…どー…いたし…まして」



ぎゅっ



「…………はぁ……」



本当の事を言うと一緒に居てくれるのはありがたいのだが、俺が変態のレッテルを貼られてしまう事を十分に考慮して解決策を見出だして欲しい所ではあるんだけどな。



登校中、幼なじみ同士のいつも通りの取り留めのない、何気無い会話、その後も冷迩達は学校までの十数分の道のりを最近見た面白いアニメや、ドラマ、映画等に費やし、並んで学校へと歩いて行くのだった。











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