第7話

「冷迩、未央音ちゃん、おはよう♪」



「あぁ、おはよう六炉」



「ろっくー……おはよ…」



登校を済ませ、教室に入るとまず声を掛けて来たのは銀髪の男子生徒だった。



「今日も仲良く登校なんて羨ましいね♪」



俺と未央音を交互に見ながらへらへら笑うこいつの名前は蓮沼はすぬま 六炉ろくろ、未央音曰く『ろっくー』との事。



「…羨ましー……だろ」



「ま、家も隣だしな」



銀髪のツンツン髪で見た目は爽やかなイケメンなのだが一応クラス、その他の友達から愛すべき弄られキャラとして親しまれている。



「さぁ!!未央音ちゃん!!いつでもいいよ!!」



そんな弄られキャラの六炉は何を思ったのか突然未央音の前で両手を広げた。




「………暖簾のれんの…物真似…?」



暖簾のれんの物真似ってなんだよ、案山子かかしの物真似だろ?」



「そもそも物真似じゃないんですけど!!?」



「……どうしたの?」



「…いや……だからその……いつも冷迩にしてるみたいに俺もハグして欲しいなー……なんて」



「……え?……普通にやだ」



「……カハッ」



六炉が吐血しながら地面に膝を着くこの光景を俺はこの学生生活の中であと何回見ればいいんだろうか……



「それはいきなりハグを求めたら誰だって嫌がるだろ」



「……じゃあ冷迩、お前ちょっとこっち来いよ」



「ん?なんだよ」



手招かれるまま未央音の目の前に立つ。



「はい、手開いて」



「こうか?」



六炉の指示通りに冷迩が両手を広げると……



ぽすっ



ぎゅっ



間髪入れずに未央音が胸に飛び込んで来た。



「………えへへ」



未央音は冷迩の腹部にすりすりと顔を埋め、幸せそうな笑みを浮かべていた。



「これ見てお前どう思う?」



「えっ、可愛い」



「誰も感想何て聞いてないんだよっ!!」



六炉は目尻に涙を浮かべ、血が滲む程拳を握り締め、悔しそうな表情を浮かべていた。



「……全く…あなたも懲りませんわね」



そんなやり取りをしていると六炉の前の方の席から呆れを孕んだため息交じりの声が聞こえて来た。



「……おぉ、一葉もおはよう」



「…おはよ……ひぃ」



「おはようございます、未央、冷迩さん」




丁寧な言葉使いで挨拶を返してくれるのは野村のむら 一葉ひとは、未央音曰く『ひぃ』との事。



髪は腰まで伸びた黒髪のロングストレート身長は未央音より5cm位高い、未央音が可愛いなら一葉には美人と言う言葉が似合うと思う。



「未央が異性相手に抱き付くのは冷迩さんだけですのよ?いい加減諦めなさい、見苦しいですわよ?」



「辛辣過ぎじゃない?」



どこぞのお嬢様のような喋り方をしているが『ある事』を除けばしっかり者で頼りになる人物だ。



「未央、今日も可愛いですわね、お菓子あるから食べてもいいですわよ」



「……ありがと…」



パシャパシャ



「おい、お前何の躊躇いも無く………」



まぁ、その『ある事』と言うのは目の前でお菓子をエサに堂々と未央音を盗撮している事なのだが……



実は一葉は未央音のファンクラブの会長で、未央音の可愛さに陶酔しているのか未央音が絡むとIQが下がる傾向にある。



未央音の幼なじみとして、未央音が可愛いのは勿論分かるのだが堂々と盗撮してるのは些か心配な点ではある。



俺達四人は一応昔からの幼なじみで俺と未央音は幼稚園の頃に出会い、この二人とは小学生の時に出会った……二人も別の幼稚園で出会ったらしく、幼なじみ仲間として、そして幼なじみとして仲良くしている。



「一葉も未央音ちゃんみたいに抱き付きたくなったらいつでも抱き付いて来ていいからね♪」



えぐ螺切ねじきりますわよ?」



「台詞の攻撃力高過ぎじゃない?…」



俺達同様、二人も仲のいい幼なじみ同士らしい。

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