第25話
「はい、終了、閉廷」
とんだ茶番だったな。
ぽひっ…
「ちょっ!?一葉殿!?そんな簡単に自白されたら弁護人の立つ瀬がないでござるよ!!」
「だ、だって未央が素直に答えろと……」
ぽひっ……ぽひっ……
「一葉、言っておくけど盗撮って犯罪だからね?」
「確かにその通りかも知れませんが六炉にそれを言われると何か府に落ちませんわね」
「俺がいつ罪を犯したと!!?」
ぽひっ……ぽひっ……ぽひっ…
「未央音、それ気に入ったのか?」
「……うん……手に馴染む」
異世界転生物の序盤に出て来る屈強な熟練モブ冒険者のような発言と共に、未央音はハンマーを眺めていた。
「それより裁判はもういいのか?」
「…よくない……ひぃ…せっかく用意したんだから……もう少し……粘ってみて?」
裁判官が被告人を粘らせるな。
「……ね、粘れと言われましても…そうですわね………あ!!そうそう、実はこの写真気付いたらいつの間にか私のフォルダに入っていたもので………そうですわ!!これは私に罪を被せようとした真犯人の策略………私を貶めようとする陰謀ですわ!!」
一葉の言葉を聞いて騒ぎ始めるクラスメイト達。
「…………………」
……騒ぎ始める…クラスメイト達…
「…………………」
「あのな未央音、多分そのハンマーはこういう時に使うといいんだと思うぞ?」
「…あ……むぐ……ごめん……むぐむぐ…今お菓子…食べてた………むぐむぐむぐ」
頬袋の許容量などまるで加味していないかのような勢いでそれはもうしこたま口の中に放り込んでいる。
「裁判中に裁判官がお菓子食うなよ!!」
いくらなんでもグダグダ過ぎる。
「み、未央音ちゃん……」
ぽひっ
「……せ…せーしゅくに!」
付き合いが良すぎるクラスメイト達はその締まりのないハンマーの音を聞くと、口を閉じて未央音に視線を集めていた。
「………あ……ぅ…」
自爆した未央音はその視線に耐えきれず顔を赤く染め上げ再び教卓の陰に隠れていた。
「……あの…被告人の証言を聞いて……検察側は何か…ありますか?」
「えっ?未央音が可愛い」
その様子を見て、冷迩は再び口から未央音に対する感情を溢れさせていた。
「異議あり!!確かに未央音殿が可愛いと言うのには同意でござるが今の質問には無関係な発言でござるよ!!」
「……異議を……却下します」
「未央音殿!?」
「さ、裁判官が冷迩の発言に対して甘過ぎるよねこれ」
「……れーじも……かわ……ぃぃ…って言って……くれるのは…その…嬉しいけど……そんな事…皆の前で…言ったら……恥ずかしいから……だめ……ばか」
未央音はぼそぼそと途中消え入りそうな声でそう言うと恥ずかしそうな表情で防御するように両腕で顔を隠していた。
「未央音……」
未央音の言動を見た男子生徒からまるで無数の弓矢の雨の様に鋭い視線が突き刺さる……
「お前等ごときが俺にそんな視線向けるとかいい度胸だな?一人残らず血祭りに上げてやろうか?」
「冷迩急にどうした!?」
「…検察側は……もう一度さっきの私の…質問に答えて下さい…」
あっはい。
「そうだな、一葉はさっき陰謀だの貶められただの言っていたみたいだけど、誰かが一葉のスマホの中に写真を入れたんだとしたら何の為に?その根拠は?一葉はまず陰謀論を唱えるより自分の無実を証明した方がいいんじゃないか?」
「………それは…そう…ですわね」
「ははっ、ぐうの音も出ないでござるなぁ」
「笑ってる場合か」
論破が容易すぎる。
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