第26話
「未央音殿、この裁判で無実を証明するのは難しそうなのでせめて罪を軽くして欲しいと思うでござるよ」
諦め早いな弁護士!
「……罪を軽く出来るだけの……理由は…ある?」
「勿論でござる、確かに一葉殿は未央音殿の写真を撮っていたでござる……正直羨ま……いや……私も未央音殿の写真が欲し……いや出来れば未央音殿の全裸の写し……いや……」
それで隠してるつもりなのか?
口を開けばどんどん出て来る卑劣極まりない欲望の数々。
そもそも志乃のような変態が弁護側についている事が納得いかない、お前は裁かれる側の人間だろ、正直一葉と並んで証言台に立っていて欲しい。
「そ、それでも一葉殿は未央音殿のお友達でござる!!盗撮していたと言えば聞こえが悪いかもしれないでござるが一葉殿はただお友達の写真を撮っていただけでござるよ」
よくあの台詞から一転してそんな綺麗事並べられたな、もういいよお前等の勝ちで………
「…限度があるだろ、どんな写真撮ったか知らないけど大分過激な内容なんだよな?」
……とも思ったが此所で勝たせると以前のように図に乗る可能性があるので出る杭はぶっ叩ける内にぶっ叩いておく。
「…過激な未央音殿の写真っ!!?」
どうやらあの短い間の修行で未央音への欲望を抑えられるのは一時的な間だけらしい。
「ひ、一葉殿、それは一体いくら詰めば私にも見る権利が得られるのでござるか!!?」
「裁判中なのに犯罪者増えて行くのやばいね」
「……せーしゅくにっ!!」
ぽひっ
間抜けな音が空間を支配すると、その後やってきたのは沈黙だった。
「……判決を……言い渡します…」
「急過ぎじゃない?」
「そろそろ飽きて来たな?」
いよいよやって来たこの瞬間に息を飲むクラスメイト一同……なんと言うか本当に付き合いいいな、正直後半弁護人が暴走したせいで一葉の罪が軽くなる予感がしない……そもそも茶番劇なので重いも軽いもないけど……
この裁判にどのような終止符を打つのか、俺は未央音の判決を見守る事にした。
対角線上に居る志乃はと言うとまるで勝ったなと言わんばかりに腕を組み、鼻を鳴らしているがこれから負ける事が分からないんだろうか……
正直クソの役にも立ってなかったし、アホなのに何で弁護役を買って出たのか理解に苦しむ。
「な、何かさっきからとてつもない罵詈雑言を浴びせられてるような気がするでござるよ」
「気のせいだろ」
中々鋭いな、流石くノ一といった所だろうか。
「主文……被告人を…」
「ちょっと待って下さい!!」
「……ど、どうしたの?…ひぃ…」
「…裁判官に……見て欲しい物がありますの、そっちに行ってもよろしいですか?」
「……うん…分かった……いいよ?」
普通の裁判ならあり得ない事ではあるけど茶番だしな、一葉が何を考えているかは分からないけど今更判決が覆る事もないだろうし。
「……未央、これを見て下さい……」
「……これ…!!……」
「……未央が望むなら勿論後でスマホに送りますわ」
「……え?……いいの?」
「………えぇ……その代わり」
「………ん……ん……分かった……戻って…いいよ?」
こそこそしてて話しは聞こえないが、よく見ると一葉は何やらスマホの画面を未央音に見せているようだった、未央音はスマホと俺の顔を交互に見ているが……何を見せられているんだろうか。
「……………………」
しばらくすると一葉は何処かやり遂げたと言わんばかりの顔で再び証言台へと戻ってきた。
「……こほん…それでは……判決を…言い渡します」
「主文……被告人を…無罪!!」
ぽひっ
はっ!?
「…ちょっ!?未央音!?お前何言ってんだ!!盗撮されてたんだぞ?」
「…え?…女の子…同士だし……ひぃはお友達だから……いいかなって」
正直そんな怒ってないだろうなとは思ってたけどだったら何の為に裁判開いたんすか……
「あ……れーじ…負けたから……後で私の事……いっぱい…いっぱい…なでなでの刑…ね?」
「マジか(歓喜)」
「……以上……へーてい!…」
ぽひっ
「……みんな……付き合ってくれて…ありがと」
最後にクラスメイトにも感謝の言葉を忘れない未央音に対して笑顔で手を振るクラスメイト達、そんな和やかな空気の中裁判は幕を閉じるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます