第31話
「…………………」
「…………………」
六炉から一葉が見つからないとの相談を受けていた俺達は何故かあの後一葉を尾行する事になり、今は物陰に隠れながら一葉の様子を伺っていた。
「……ひぃ……何か…怪しい動き…してるね?」
「俺達が人の事言えた義理か?」
最初は単に一葉を見付ける事が目的だったものの、見付けた後の一葉の様子が不自然だった為、尾行に切り替えて追跡していると言った所だ。
しかし俺達は二人と言う事もあり、挙動不審なのも手伝って道行く生徒為にすれ違い様に不思議そうな目で見られていた。
隠れながら、前に進む……よくよく見て見ると、いつの間にか俺達も一葉と同じような行動をしている事に気が付いた。
つまり一葉も誰かを尾行していると言う事だろうか?
もしそうなら一葉が尾行している人物を確かめたいと言う気持ちもあるものの、如何せん尾行の尾行故にその人物を確認する為に前に出れば、一葉にバレてしまう恐れがある。
正直バレた所で言い訳なんていくらでも出て来るし、特にデメリットもないが未央音が尾行に対してちょっとノリノリなので付き合う事にする。
「……ひぃ…何してるのかな?」
「女子更衣室でも忍び込もうとしてるのかもな」
「……………………」
うん、自分で言っておいてアレだと思うし今日は盗撮の件もあったけど、親友として少しはフォローをしてやって欲しい所……
「……あっ……れーじ…見失っちゃう……」
「…やべっ」
一葉が小走りで廊下の角を曲がると完全に視界から消えた事に焦り、俺達も急いで一葉が曲がった廊下の角へと急いだ。
「……!?……ひぃ…居ない」
「はっ!?この短期間で一体何処に……」
廊下の角に隠れながら様子を伺う様に覗き込むとそこには既に一葉の姿がなかった。
「何をしてますのあなた達は」
「っ!?」
「…ぴぃっ」
自分の肩が跳ねるのと同時に未央音の口から驚いた拍子に小鳥のような声が出る。
「…………………」
「相変わらず仲良しですわね、あなた達は」
恐る恐る振り返ると、そこには当たり前のように未央音をおんぶして尾行している俺を呆れたような表情で見ている一葉の姿があった。
「……というか何故おんぶを…」
尾行+おんぶと言う異色の組み合わせに、一葉の顔に呆れが追加されて行く。
因みに俺が未央音をおんぶしていると言うのは些末な問題なのでその質問には敢えて答えない事にする。
「一葉、せっかく無罪になったのにまた罪を重ねるのか?」
「な、何の話しですの?」
「…ひぃ……自首しよ」
「何もしてませんけれど」
「お前が女子更衣室に侵入しようとしてる事は分かってるんだよ!!」
「私も女子ですけど…よくその状況で凄めましたわね……」
分かる。
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