第14話
キーンコーンカーンコーン
一日の授業が終わり、放課を知らせるチャイムが教室に鳴り響く……修行に出たと言う志乃はあの後遂に姿を見せる事はなかった。
六炉は何をしたのか教師に職員室に呼び出され、HRが終わると俺達に一声掛けた後、急ぎ足で教室から出て行った。
「……しぃ…どこ行ったの……かな?」
窓の外に視線を向け、未央音は何処か心配そうに呟いていた。
「修行とか言ってたみたいだけどどうせ何処かで道草くってるんだろ、明日になればきっとケロっとした顔でまた遊びに来るさ」
どれだけ厳しい修行を積んでる事やら……でも志乃の事だしきっとその修行の成果も未央音の魅力の前ではきっと水泡に帰すんだろうな。
「チャイムも鳴ったしそろそろ帰ろうか?」
「…今日…少しだけ……用事ある…」
「一緒に行くか?」
「………………」
服の裾を掴む未央音にそう聞くと、未央音は俯きがちに首を横に振っていた。
「………………」
珍しい、自分で言うのもなんだけど未央音はあまり俺の傍から離れようとはしないのに……俯いているようだけど何か理由があるんだろうか?
「それじゃあ此所で待ってるから行って来たらどうだ?」
「………ん」
その言葉を聞いた未央音はもじもじした様子で何やら腑に落ちない事でもあるのか、手を合わせ、ゆっくりと身体を左右に振っていた。
「……んー……れーじ」
ぎゅっ
「うわっとと……どうしたんだよ未央音」
俺の胸に顔を埋め、すりすりとすり寄ってくるその様子はまるで寝起きで少し機嫌の悪い子供のようで、何となく離れたくないと言うような意思を感じた。
「…戻って来るまで……待っててくれる?」
「未央音を置いて俺が先に帰る訳ないだろ?」
「……ん……分かった」
「あぁ、そう言えば昼の時母さんから連絡来てたけど、今日の夜未来も誘って夕食食べに来ないかって言ってたぞ?」
「行く」
「…即答だな」
俺の腰に手を回したままジト目で見上げてくる未央音に思わず苦笑いが零れた。
「……うん」
小さく頷くと俺を抱き締めている未央音の腕の力が少しだけ強くなったような気がした。
「ほら、待ってるから行って来いよ、行かなきゃいけないんだろ?」
どうして未央音が此所まで渋るのかは分からないが、この様子だときっと大事な用事であることは間違いないんだろう……
「……うん…そうだね……それじゃ…行ってきます」
その言葉に促され漸く離れた未央音の表情はいつもより少しだけ引き締まっている様子だった、それでも眉毛が若干……ほんの少しだけ眉間に寄っただけだが俺には分かる。
「れーじ……待っててね?……絶対…だよ?」
未央音は教室の扉に手を掛け、再度こちらに振り向くと念押しをして来た。
「あぁ、待ってるよ……」
俺の笑顔に答えるように、未央音も安堵したように笑うと最後に小さく手を振って教室から出て行った。
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