第38話

「おーい、生徒新聞貰って来たよー♪」



コンテストの結果発表の日、六炉は新聞を片手に掲げながら教室へと入って来た。



「未央音、結果が来たみたいだぞ?」



「………………………」



「未央音?」



「…え?あ……うん」



「…………?」



コンテスト用に写真を撮ってからと言うもの、最近の未央音は事あるごとにスマホを見ては、顔を赤らめたり、にへっと笑ったり何やらご機嫌の様子。



「……何か面白いものでも見てるのか?」



「……あっ…だめ」



……と、気になって覗き込もうとしても直ぐにスマホを引っ込めてしまう……少し寂しい気もするけどそれは幼なじみにだって見せられないものの一つや二つあるか。



「私の渾身の一枚は出てるでござるか!?」



「早く見せなさい」



「まあまあ、慌てない慌てない」



六炉は人差し指を左右に振ると、皆が集まった事を確認して机の上に新聞を広げた。



「……はは、まさかあんな写真で一位が取れるとはな」



新聞を広げて一番に目に飛び込んで来たのは俺と未央音、二人で頬を摘まみ並んで変顔をしている、俺達に取っては日常を写した一枚だった。



「まぁ、流石だよね、未央音ちゃんと冷迩のペアだし……」



「当然ですわね」



「な、何で一葉がそんな得意気な顔を?」



「未央が投稿したその日ファンクラブの全勢力をもってバズらせました」



「暇なの?」



「未央の写真を2億枚保存するのに忙しかったですわ」



「もう一回同じ事言わせる気?」




暗い部屋で無言で無表情で未央音の写真を保存連打している一葉を想像するとちょっと恐怖を感じるな。



「投票した人のコメントもいくつか記載があるでござるよ!」



「冷迩さんの変顔がレア、未央は変顔してても可愛い、尊い……やっぱり二人揃うとこの順位は揺るぎませんわね」






二人揃うとって言うかほとんど未央音による功績が大きいとは思うけど……




「れーじの変顔……かわい」



「撮った時はなんとも思わなかったけど他の奴らも見るんだよなこの写真、そう思うとちょっと恥ずかしいな」



ぎゅっ



「…恥ずかしがってる…れーじも……かわぃ♪」



可愛いのはお前なんだよっ!!



「…あ……見て?…これもしかしてしぃの…写真?」



未央音の指差す先を見ると、部長セレクトなるコーナーにあの日志乃が被写体にすると言っていた綺麗な形の丸い石が掲載されていた。




「おぉっ!!そうでござるよ!!」



「新聞部部長のコメントもあるね……何々?この石を見た途端、自分の中にある子供の心が完全に呼び覚まされた、面白い新聞を書こうと日々躍起になっていた自分に取って久しぶりに童心に戻れたような、リラックスしたような気分になれた……童心から連想して次回の新聞のテーマは『ロリ』特集で組もうと思う、この発想を与えてくれた志乃君には、感謝と敬意を評したい……」



「…………………」



何で童心から連想するのがロリなんだよ、インテリみたいなコメントしてるけどこいつの頭の中にはランドセルでも詰まってるのか?発想も何もただのお前の性癖だろ、新聞部の部長とは会ったことないけど気持ち悪いんだよいい加減にしろ。



「冷迩殿?辛辣な顔してるでござるよ?」



どんな顔だ。



「それにしても、コメントを見るとあまり素直に喜べない自分がいるのは気のせいでござるか?」



流石の志乃も引き吊った笑みを浮かべている、自分が過去を懐かしんで撮った写真が性癖の暴露に利用されたらそれはそうなるよな……なんなら選ばれなかった方が良かったかもしれないと思える程に。


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