第28話

「…写真か」



あの後、六炉からコンテストの詳細を聞いて今はスマホのカメラを起動してレンズを通して周りを見ている所だ。



何でも写真の受付期間は今日から一週間後までで、選ばれた写真が生徒新聞に掲載されるのは更に一週間後の事らしい。



未央音を撫でくり回している内に話しがトントン拍子に進んでいたのでいまいち展開に着いていけてない自分がいる。



教室の中を見渡して見ると、生徒新聞の講読者は結構居るのか教室内では友人等がポーズを取り合って写真を撮っているクラスメイトがちらほら見受けられた。




「……れーじ…一緒にとろ?」



ぎゅっ



スマホを片手に首を傾げているといつものように未央音が後ろから抱き付いて来た。



「…あぁ、勿論いいぞ?」



正直、未央音の申し出はありがたいと思った、というのも何を撮ればいいのか、どういう風に撮ればいいのか分からない、一葉の撮った綺麗な写真を見た後なら尚更だ。



俺はSNSもあまりしないタイプなのでカメラを使って何かを撮ると言う機会もあまりない、せいぜい未央音とたまに写真を撮る位だろうか?それもほんのたまに。



無意識気味に未央音にカメラを向けると……



「………ん…」



流石幼なじみ、阿吽の呼吸と言った所だろうか未央音は即座にピースして見せた。



パシャリと音がして、お互いに身体を寄せて画面を覗く。



「………どう?」



「ん?いや可愛いけどやっぱりコンテストみたいに選ばれる写真ってなるとちょっと工夫が足りないのかもな」



「……ん…同感」



「…未央音もそう思うのか?」



「…うん……今までと…同じじゃ……もう駄目…だから」



同じ事について話している筈なのに、その一言からは何か違う意図を感じたような気がした。



「……未央音?」



「…それに……せっかくやるなら…一位…取りたい…」



普段無表情で無気力気味な未央音からは想像出来ないような勝ち気がちらりと顔を覗かせる。



「……れーじ?」



「ん?どうした?」



「…ぴーす」



「おう、ピース」



未央音が俺の胸に肩を寄せ、指示通りにポーズを取ると先程と同じ音が教室の中に小さく響く。



「…ふつー…だね?」



「普通だな」



画面に写し出されているのはいつもの二人で撮る写真と何ら変化はない。



「……むむ…ふつー…やだ」



満足がいかないのか未央音はスマホとにらめっこして頬を膨らませていた。



「そもそも俺達ってあんまり写真とか意識して撮ってなかったしな」



「…ひぃ達は……何を撮るのかな?」



「………そうだな」



正直一葉に関しては既にフォルダ内に十分コンテストに応募出来そうな写真がいっぱい入ってたけど……六炉は何気にこういうの得意そうではあるな……志乃は……うん…



「未央音、お前当分女子更衣室で着替えとかする時気を付けるんだぞ?…天井とかにも潜んでるかもしれないからな?」



「…え?……何が?」



そう言えば、俺と未央音は一緒に撮る事にしたけど他の三人は別々で撮ってるんだろうか?



「未央音、あの三人も写真撮ってるみたいだし発想が湧かないなら三人の様子を見に行ってみないか?」



「……ん…ちょっと…お昼寝…したい気もするけど……いいよ」



「寝るなら家に帰ってからにしような」



眠い目を擦る未央音に呆れたようにそう言った。

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