第45話

「大体……意地…張ってるのは…れーじの方……早く負けを認めた方が……いいと思う…」



「どうやら寝言言ってんのはお互い様みたいだな」



「……む」



「なんだよ」



スパァァァァァァァァァァァァァンッッッ



二人が睨み合っていると突如教室の扉が大きな音を立てて開いた。



「うるさっ!?何事!?」



「未央と冷迩さんが喧嘩してると聞いて駆けつけましたわ!!」



大きな音をかき消す程の大声と共に現れたのは一葉だった。



「撮影会場は此所ですのっ!!?」



「さ、撮影会場?何言ってんのか分かんないけどちょっとヒートアップして来たから一葉もなんか言ってやってよ」




自分達ですら二人が喧嘩している事を知ったのはつい先程なのにどういう情報網を持ってれば二人が喧嘩してる事が分かるのかと言う疑問に目を瞑りつつ、六炉は喧嘩を止めさせる為、救世主のように現れる一葉にそう催促した。



「……あ、そうでしたわね、すみません少し興奮してしまって我を忘れてましたわ」



「ってかなんでこの状況で興奮してんの?」



「全く仕方ありませんわね……ほら二人共、どうしたと言うんですの?いつも仲の良い二人が喧嘩なんて……」



一葉は二人の間に立って手を取った。



「…一葉」



「…ひぃ」



「もっとやれ!!ですわ!!」



「ひ、一葉殿…」



「あっうん、分かった一葉ちょっとこっち来ようねー」



「んー!!んー!!」



六炉は文字通りの爆弾発言を言ってのける一葉の口を片手で塞ぎ、回収して行った。



「…んっ……ぷはっ……ちょっ、六炉!?いきなり何をするんですの!?」




「こっちの台詞なんですけど!?喧嘩してる人の前で一番言っちゃいけない事なんの躊躇いもなく言うじゃん!?バグってんの!?」



「…全く、せっかく特等席で二人の喧嘩が見れると思いましたのに……」



「エンタメじゃねーから!!」



「一葉のお許しも出たし今日はとことんやらないとかもな?」



「……む…臨む…とこ」



「ほら焚き付けちゃったじゃん!!」



「というか一葉殿、二人が喧嘩してると何かあるんでござるか?」



「二人の喧嘩はファンクラブの間で尊いと話題ですの」



「不謹慎にも程があるでしょ」



「未央は勿論ですが私のファンクラブには冷迩さんと未央のカプ推しの方も大勢居るのでファンクラブの私達からすればまさにお祭りと言えるイベントですのよ!!」



「そのファンクラブは人の心持ち合わせてないの!?自分達が楽しければそれでいいのか!」



「……だって喧嘩してるのに手を繋いでますのよ?可愛らし過ぎて尊いですわ、それに二人の事ですからきっとすぐに仲直りしますわよ」



「いや、まぁ……それはそうなんだけど…」




「…………………」



「…………………」




「はぁ、今日は一日こんな感じなのかねぇ…」



無言で睨み合う二人を見て、六炉はため息をついていた。

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